
住宅ローンの審査とは
住宅ローンの審査は、「人」と「物件」の審査項目それぞれを見て総合的に判断されます。申込者のデータに点数を付けて合計点で決めるスコアリング方式もありますが、これは主流ではありません。国土交通省の令和7年度調査(回答852機関)では、「スコアリング方式では審査を行っていない」が59.9%で最も多く、「一部で使っている」24.4%と「中心にして使っている」15.7%を合わせた約4割が、なんらかの形でスコアリングを使っているという構図です。点数だけで機械的に決まるわけではないと理解しておくほうが実態に近いといえます。- 「人」についての審査項目
- 勤務先の規模・雇用形態
- 勤続年数
- 年収
- 借入時・完済時の年齢
- 健康状態(団信に加入できるか)
- 信用情報(他の借入れや返済履歴)
- 「物件」についての審査項目
- 価格・担保評価
- 立地や利便性
- 建築確認の有無
金融機関は実際にどこを見ているのか(公的調査データ)
とはいえ、まったくの手探りというわけでもありません。国土交通省が民間金融機関を対象に毎年実施している「民間住宅ローンの実態に関する調査」では、融資を行う際に考慮する審査項目が集計されています。令和7年度調査(2026年3月公表・審査項目の回答は994機関)では、次の項目を9割以上の金融機関が審査項目として挙げました。| 審査項目 | 考慮する金融機関の割合 | 借り手が備えられること |
|---|---|---|
| 完済時年齢 | 98.4% | 返済期間の取り方(基準を「80歳未満」とする機関が716と最多) |
| 借入時年齢 | 96.2% | 申込時期を先延ばししすぎない(「65歳未満」247機関・「70歳未満」194機関) |
| 健康状態 | 96.1% | 団信に入れるか(「団信加入が必要」834機関/「加入は選択可能」89機関) |
| 年収 | 94.2% | 下限は「150万円以上」390機関・「100万円以上」288機関が多い |
| 勤続年数 | 93.9% | 「1年以上」が612機関で最多(「3年以上」は128機関) |
| 担保評価 | 91.0% | 「融資判断に影響する」498機関/「参考にする」342機関 |
| 返済負担率 | 90.9% | 自分で最もコントロールしやすい項目 |
出典:国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月公表)。割合は審査項目の回答994機関に対するもの。カッコ内の機関数は「具体的な内容」への複数回答の集計値。
注目したいのは、上位に並ぶ項目の多くは、申込みの時点ではもう変えられないということです。年齢も勤続年数も健康状態も、直前に変えることはできません。裏を返せば、借り手が自分で調整できる余地が大きいのは「返済負担率」と「他の借入れ」の2つに絞られます。ここを整えることが、審査対策の中心になります。 同じ調査には、数字を見ると安心できる材料も含まれています。勤続年数の基準は「1年以上」と答えた機関が612と圧倒的に多く、「3年以上」は128機関にとどまります。雇用形態を審査項目とする702機関のうち、自営業者を対象外としているのはわずか10機関(派遣社員を対象外とするのは368機関、契約社員は312機関)。「勤続3年ないと無理」「自営業は門前払い」というイメージは、統計上は実態より厳しすぎるということです。金融庁も「収入見込みに照らして適切か」を見始めている
2026年9月15日、金融庁は今後1年間の重点施策をまとめた「2026事務年度金融行政方針」を公表しました。そこには、住宅ローンについて「従前よりも償還期間が著しく長い商品などが販売されている」と現状を挙げたうえで、「住宅ローン利用者の収入見込みなどに照らして適切なローンが組まれているか等について、利用者保護の観点から注意深くモニタリングを行う」と明記されています(金融庁「2026事務年度金融行政方針について」)。 ここで誤解しないでほしいのは、これは長期の住宅ローンを規制したり、審査基準を引き上げると決めたものではないという点です。行政方針に書かれたのは「モニタリング(監視)を行う」であって、商品の禁止でも新しい審査基準の導入でもありません。「審査が厳しくなる」と予測するのも早すぎます。 それでも借り手にとって意味があるのは、「返済期間を延ばせば月々は下がるが、収入見込みに見合っているか」という論点を、公的機関が同じように重要視していると確認できることです。返済期間を最大まで延ばして毎月の返済額を下げる方法は、審査を通すうえでは有効に働きます。ただしそれは利息を払う期間を延ばす選択でもあります。審査に通ることと、無理なく返せることは別の問題だという原則が、ここでも確認できます。審査に通るためには
審査の詳細は明かされていませんが、これまで多くの人が住宅ローンを借りてマイホームを購入してきたのも事実です。対策の立てようがないと諦める必要はありません。気をつけておきたいポイントを解説します。返済負担率を考える
審査でとくに意識したいのが返済負担率です。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のこと。一般的には25%以内に抑えると余裕をもった返済がしやすいとされています。 基準がはっきり公表されている例として、【フラット35】では次の総返済負担率が利用条件として定められています(この基準を超えると申込みできません)。| 年収 | 総返済負担率の基準 | 年収500万円なら(目安) |
|---|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 | ― |
| 400万円以上 | 35%以下 | 年間175万円(月約14.5万円)まで |
出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件(2026年4月1日現在)
なお民間金融機関では、返済負担率の基準を年収にかかわらず一律で決めている機関は少数です。前述の国交省調査で一律の基準を回答したのは、「40%以内」74機関・「35%以内」58機関・「30%以内」39機関などにとどまり、返済負担率を審査項目とする904機関の大半は年収に応じて基準を変えていることがうかがえます。つまり同じ返済負担率でも、年収帯によって見られ方が違うということです。 ここで気をつけたいのは、「基準の上限まで借りられる」ことと「無理なく返せる」ことは別物だという点です。基準は35%でも、そこには固定資産税・修繕積立金・保険料といった持ち家になってから増える固定費は含まれていません。物件購入にいくら必要で、年収に対する返済額がいくらになるのかを把握したうえで借入額を決めましょう。返済負担率が35%に近づくほど、審査も返済も厳しくなります。希望物件に届かない場合は、頭金を増やすか、物件そのものを見直す判断も必要です。 自己資金の有無も効きます。フラット35では、融資率(借入額÷建設費・購入価額)が9割を超える場合は「返済の確実性等をより慎重に審査する」と明記されています。頭金を1割用意できるかどうかは、金利だけでなく審査の通りやすさにも関わる分かれ目です。他の借り入れに注意
車のローンやキャッシングを利用中に住宅ローンを申し込むときは注意が必要です。返済負担率にはこれらの借入れも合算されるからです。フラット35では、自動車ローン・教育ローン・カードローン(キャッシングや分割払い・リボ払いを含む)などが年間合計返済額の対象になると明記されています。賃貸予定・賃貸中の住宅に係る借入金も含まれる点も見落としやすいところです。 住宅ローン単独なら余裕があっても、他の借入れを足すと基準を超えてしまう――というのはよくあるつまずき方です。申込みの前に、返せるものは完済して整理しておくのが確実です。ローンの返済に注意
クレジットカードの支払いをきちんと続けていれば、信用情報にはプラスに働きます。「約束どおり返済する人」と判断されるためです。逆に返済が遅延すると信用情報にマイナスの記録が残り、審査に通りにくくなります。最近はスマホ本体の分割(割賦)払いの遅延も見落とされがちです。機種変更のタイミングで前の機種の支払いが滞らないよう気をつけましょう。 また、クレジットカードのキャッシング枠は、使っていなくても借入枠として見られることがあり、返済負担率を押し上げる要因になります。使っていないカードは、住宅ローンの申込み前に整理しておくと安心です。 このポイントに注意すると審査が通りやすくなるかもしれません。・借入額を無理のない返済額に抑える
・キャッシングなどの借金をしない
・クレジットカードの保有枚数はなるべく少なくする
事前審査と本審査は別物
多くの金融機関では、事前審査(仮審査)→本審査の二段階で進みます。事前審査は申告内容をもとにした簡易な確認で、本審査では収入証明・物件資料・団信の告知などを提出して正式に判定されます。事前審査に通っても本審査で否決されることはあるため、事前審査の結果だけで安心しないことが大切です。 なお、金融機関によって進め方は異なります。たとえばSBI新生銀行は原則として仮審査を行わず、本審査のみで完結するのが特徴です。必要書類を最初に一式そろえる必要がある一方、審査が一度で済むため手続きの見通しが立てやすいという利点があります。他行と併願するなら、他行側の事前審査を先に済ませておくと段取りがスムーズです。銀行ごとの見られ方の違いは、PayPay銀行の審査基準やSBIアルヒの審査基準のように個別に見ていくとつかみやすくなります。属性別のよくある質問
Q. 自営業・個人事業主でも住宅ローンは組めますか?
A. 組めます。国交省調査でも、雇用形態を審査項目とする702機関のうち自営業者を対象外としているのは10機関だけです。ただし見られるのは売上ではなく所得で、フラット35では給与収入以外の方の年収を「事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得および給与所得の所得金額の合計額」と定義しています。複数期分の申告書を求められることも多く、節税のために所得を圧縮しすぎると借入可能額が下がる点に注意が必要です。開業して間もない場合、フラット35には起業後の所得を「所得を得た期間」で1年分に割り戻して年収とみなす取扱いがあります。
Q. 転職したばかりで勤続年数が足りませんが、申し込めませんか?
A. 「◯年未満は一律で不可」と決まっているわけではありません。国交省調査では、勤続年数の基準として「1年以上」を挙げた機関が612で最多、「3年以上」は128機関にとどまります。フラット35では転職後の収入証明書類をもとに支給月数で割り戻して年収とみなす取扱いがあり、借入申込日から遡って12か月以上の給与支給があれば、その実額を年収とみなすと案内されています。同業種へのステップアップ転職か、収入が下がる転職かでも見られ方は変わるため、複数行で確認するのが現実的です。
Q. 夫婦でペアローンを組めば審査は通りやすくなりますか?
A. 借入可能額は増えますが、審査が「甘くなる」わけではありません。2人がそれぞれ債務者になるため、事務手数料や登記費用などの諸費用が2本分かかる点、どちらかが仕事を離れると返済が一気に苦しくなる点は総コストで見ておく必要があります。フラット35は連帯債務者を含めて2名までという申込要件もあります。片働きに戻る可能性があるなら、収入合算(連帯保証・連帯債務)や単独ローンとの比較も含めて検討しましょう。
Q. 健康に不安があります。団信に入れないと借りられませんか?
A. 民間の住宅ローンは団信加入が必須の商品が大半で、国交省調査でも健康状態を審査項目とする機関のうち834機関が「団信加入が必要」と回答しています。一方で「加入は選択可能」とする機関も89あり、引受基準を緩やかにしたワイド団信を扱う金融機関や、団信に加入しなくても利用できるフラット35という選択肢もあります。健康状態は自分では動かせない審査項目だからこそ、団信の選択肢が広い金融機関を早めに探しておくことが対策になります。
Q. 審査に落ちたら、すぐ別の銀行に申し込んでもいいですか?
A. 申込みの事実は信用情報機関に一定期間記録されるため、短期間に何行も申し込むと不利に働くことがあります。落ちた原因(返済負担率が高い、他の借入れが残っている、物件評価が届かない など)を推測して手当てをしてから、次に進むほうが確実です。金融機関の営業エリアも条件になっており、「エリア内に居住」を挙げた機関は811、「エリア内に勤務」は565ありました。申込先の地域要件を満たしているかは、事前に確認できるポイントです。
まとめ:変えられない項目より、変えられる項目に手を打つ
審査項目の上位を占める年齢・健康状態・勤続年数は、申込み直前にはほとんど動かせません。だからこそ、返済負担率を下げる・他の借入れを整理する・信用情報を汚さないという、自分でコントロールできる3点に集中するのが最も効率のよい審査対策です。 そのうえで、金利の低さだけで申込先を選ばないことも忘れないでください。事務手数料・保証料・団信の上乗せまで含めた総支払額で見ると、順位が入れ替わることは珍しくありません。団信の保障が手厚い金融機関や、SBI新生銀行のように保証料・一部繰上返済手数料が0円で費用構造が分かりやすい金融機関も、選択肢として検討する価値があります。審査に関する条件・必要書類は改定されることがあるため、最新の内容は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。 銀行ごとや年収ごと、さらには審査に通りやすいと考えられる住宅ローンなど”審査”に焦点を当てた以下の記事を参考にしてみてください。・住宅ローン審査に通りやすい銀行ランキング
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