
「預金連動型住宅ローン」という住宅ローン商品をご存じでしょうか。
アメリカで生まれ、日本では東京スター銀行が初めて取り扱いを始めて積極的にCMを展開していたため、名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。
現在でも預金連動型住宅ローンを取り扱う金融機関は限られますが、金利の上昇局面に入り、あらためて注目が集まっている住宅ローンです。
この記事では、金利の数字だけでなく総支払額や向き・不向きまで掘り下げて、「預金連動型住宅ローン」のメリット・デメリットと取り扱う金融機関を解説します。最後までお付き合いいただければと思います。
1.そもそも「預金連動型住宅ローン」とは?
「預金連動型住宅ローン」は、住宅ローンの借入残高から預金残高を差し引いた分にだけ住宅ローン金利がかかる住宅ローンです。預金している金額のぶんだけ繰上返済をしたのと同じように、利息の支払いコストを抑えられる効果があります。

例えば、住宅ローンの借入が2,000万円、普通預金の残高が1,000万円あるとすると、差額の1,000万円に対してのみ住宅ローン金利が発生します。預金が増えるほど、利息のかかる元本が小さくなっていくイメージです。
2.「預金連動型住宅ローン」のメリットとは?
「預金連動型住宅ローン」のメリットは、繰上返済をしなくても、繰上返済をしたのと同じように住宅ローン金利の支払いコストを抑えられる点です。
通常、住宅ローンを繰上返済すると住宅ローンの残高が減るため、住宅ローン控除(減税)で還付される税金も減ってしまいます。一方で預金連動型は住宅ローンの残高そのものは減らないため、住宅ローン控除に影響を与えません。利息を抑えつつ、控除のメリットも残せるわけです。
さらに、繰上返済と違って手元に預金を残したまま利息を軽減できるため、急な出費に備えながら返済負担を下げられる点も魅力です。預金はいつでも引き出せるので、いざというときの安心感があります。
3.「預金連動型住宅ローン」のデメリットとは?
最大のデメリットは、基準となる金利(基本金利)が一般的な住宅ローンより高めに設定されやすい点です。預金で相殺できることが前提の商品のため、相殺できる預金が十分にないと、かえって割高になりがちです。
また、商品によっては変動金利の「5年ルール」(5年間は毎月返済額を据え置く仕組み)や「125%ルール」(返済額の上昇を1.25倍までに抑える仕組み)が適用されない場合があります。たとえば東京スター銀行のスターワン住宅ローンはこれらのルールが適用されないため、金利が上がると毎月の返済額がそのまま増える点に注意が必要です(適用の有無は各金融機関の公式サイトでご確認ください)。
このように、住宅ローン残高に対してまとまった預金を持てる人でないとメリットを活かしきれないのが、この商品の本質的な性格といえます。金利の低さだけで判断せず、自分の手元資金とのバランスで考えることが大切です。
4.代表格・東京スター銀行「スターワン住宅ローン」は2025年に販売を再開
預金連動型の代表格である東京スター銀行は、2003年2月に日本初の預金連動型「スターワン住宅ローン」を発売しました。その後、住宅ローンの金利引き下げ競争が激しかった時期に一時販売を停止していましたが、金利の上昇局面を受けて2025年1月6日に販売を再開しています。
再開後のスターワン住宅ローンは、預金連動対象預金の残高が借入額を上回り、かつ団信に加入しない場合に、預金連動後の実質金利を年0%まで下げられるのが特徴です。団信は「団信なし」「ワイド団信」「がん団信」から選べ、再開時の案内では特約金利(団信の実質的な保険料に相当)はワイド団信で年0.204%、がん団信で年0.504%とされています。※適用金利・特約金利・手数料は変わるため、最新の内容は必ず東京スター銀行の公式サイトでご確認ください。
どんな人にメリットが大きい?
イメージしやすいよう、極端な例で考えてみましょう。住宅ローンの残高が5,000万円あり、同額の5,000万円を預金できる人であれば、預金連動によって住宅ローンの金利負担は実質ゼロに近づけられる一方、住宅ローン控除は残高に応じて受け取れる計算になります。つまり「住宅ローン残高が大きく、手元資金も厚い富裕層」ほど効果が大きい商品ということです。逆に、預金が住宅ローン残高の一部にとどまる場合は、基本金利の高さがそのまま負担になりやすいため、一般的な低金利の住宅ローンと総支払額をよく比較しましょう。
5.預金連動型住宅ローンを取り扱う金融機関は?
預金連動型住宅ローンは、現在も取り扱う金融機関が限られる商品です。もっとも代表的なのは前述の東京スター銀行(2025年1月再開)で、このほか一部の地方銀行・第二地方銀行・信用金庫などが独自に取り扱ってきた経緯があります。
ただし、地銀・第二地銀・信金は自行の営業エリア内でしか住宅ローン融資を行わないことが多く、利用できる人は地域や条件によって限られます。また、合併や商品改定によって取扱状況は変わります(例えばかつて取り扱っていた関西アーバン銀行は、2019年4月に近畿大阪銀行と合併して関西みらい銀行となっています)。現在も預金連動型を取り扱っているか、条件はどうかは、必ず各金融機関の公式サイトで最新情報をご確認ください。
なお、メガバンクや多くのネット銀行では預金連動型住宅ローンは取り扱っていないのが一般的です。低金利そのものを重視する場合は、変動金利の低い住宅ローンと比較するのが現実的です。
6.預金連動型住宅ローンの住宅ローン減税への影響は?
預金連動型住宅ローンを利用していても、住宅ローン残高そのものは減らないため、住宅ローン控除(減税)への影響はなく、規定どおりの控除が受けられます。このため、住宅ローン残高と預金残高がともに大きいほど、利息を抑えながら控除の恩恵も受けやすい、という点が大きな魅力になります。

7.預金連動型住宅ローンのよくある質問(FAQ)
Q. 預金がほとんどなくても利用するメリットはありますか?
A. メリットは小さくなります。預金連動型は「預金で相殺できること」を前提に基本金利がやや高めに設定されやすいため、相殺できる預金が少ないと割高になりがちです。手元資金が多くない場合は、一般的な低金利の住宅ローンの方が総支払額を抑えやすいことが多いです。
Q. 自営業や転職直後でも借りられますか?
A. 預金連動型かどうかにかかわらず、住宅ローンの審査では勤続年数や収入の安定性が見られます。自営業・転職直後の方は、預金残高や自己資金の厚みが評価されることもありますが、取扱条件は金融機関ごとに異なるため、事前に相談して確認するのが安心です。
Q. 金利が上がると返済額はどうなりますか?
A. 預金で相殺しきれていない部分には金利がかかるため、金利上昇の影響を受けます。さらに「5年ルール・125%ルール」が適用されない商品では、見直し時に毎月の返済額がそのまま増えることがあります。預金残高に余裕を持たせておくことが、金利上昇への備えになります。
8.まとめ
預金連動型住宅ローンは、住宅ローン残高が大きく、手元資金も厚い人ほどメリットが大きい商品です。金利の上昇局面では、預金を活かして利息を抑えつつ手元資金を残せる選択肢として、あらためて注目されています。
一方で、手元資金がそれほど多くない場合は、事務手数料・保証料・団信まで含めた総支払額で見ると、一般的な低金利の住宅ローンの方が向いていることも少なくありません。たとえばSBI新生銀行は、保証料や一部繰上返済手数料が0円で諸費用がわかりやすく、団信の保障も選べるなど、総コスト重視で検討する際の有力な選択肢の一つです。
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