
住宅ローンの返済が1回遅れただけで、家を失うことはありません。ただ、滞納が3〜4か月続くと分割で返す権利を失い、残りを一括で求められたうえで競売へ進むのが一般的な流れです。延滞する前に借入先へ相談すれば、返済期間の延長や元金の据え置きで、毎月の負担を軽くできる余地が残ります。
相談を急ぐ理由は金利の動きにもあります。日本銀行は2026年10月30日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%程度に据え置きましたが(日本銀行「金融政策に関する決定事項等」)、9月の引き上げを受けた大手行の短期プライムレートの改定は11月から始まっています。
変動金利で借りている人は、病気や離職、ボーナス減といった収入の変化と金利の上昇が重なる場面を、返済計画の前提に入れておく必要があります。
日銀の利上げが毎月の返済額に反映されるまでには時間差がある
日銀の利上げは、すべての銀行の変動金利に同じ時期に反映されるわけではありません。多くの銀行は変動金利の基準を短期プライムレートに置き、年2回の見直しで適用金利を決めているため、利上げから手元の金利が変わるまでの期間が銀行ごとにばらつくからです。
2026年9月の利上げを受けて、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は11月2日に短期プライムレートを年2.375%から年2.625%へ引き上げ、三井住友銀行も11月9日から同じ水準にする予定です。一方で、すでに借りている人の適用金利がいつ変わるかは、各行の見直しのルールと契約の内容によって決まります。
適用金利が上がった時点と、毎月の返済額が変わる時点も別です。金利改定が返済額に反映される時期は、銀行や契約の種類(毎月見直すもの・年2回見直すものなど)で異なります。「ニュースで上がったと聞いたから、来月から返済額が増える」とは限りません。
変動金利がこの先どう動きうるか、上昇に備えて今から何ができるかは、変動金利の今後の見通しと備え方の記事で解説しています。
最初にやるべきは「自分の適用金利を確認すること」
報道されるのは各行の最優遇金利で、これは条件を満たした人に適用される金利です。あなたに実際に適用されている金利ではありません。返済が不安なら、まず返済予定表(償還予定表)とインターネットバンキングの契約内容で、①現在の適用金利 ②残高と残りの返済期間 ③次の金利見直し時期 ④5年ルール・125%ルールの有無、の4点を確認してください。話はそこから始まります。
返済を滞納すると何か月目に何が起きるのか
住宅ローンの返済を滞納すると、金融機関(および保証会社)から届く通知は、滞納の回数に応じて段階的に重くなります。
1回の滞納
基本的には、金融機関から口座引き落としができない旨の連絡が電話で来たり、はがきや封書で「未払いのお知らせ」といったものが届いたりします。いきなり競売になることや、一括請求されることはありません。
ただし、毎月の返済額に延滞損害金が加算されます。年14%前後(1年を365日とする日割り計算)と定めている契約が多く見られますが、利率は契約ごとに異なり、正確な率は手元の金銭消費貸借契約書に書かれています。さらに、延滞が続くと遅延情報が個人信用情報機関に登録され、将来の借り換えや買い替えで再び住宅ローンを利用することが難しくなります。
2回以上継続して滞納(2ヶ月目の滞納)
競売予告通知が送られてくる場合があります。競売予告通知とは、「このまま滞納を続けると最終的に競売にかけられます。早急に滞納分をお支払いください」という通知です。
3回以上継続して滞納(3ヶ月目の滞納)
滞納が3ヶ月以上続くと、金銭消費貸借契約書上の「期限の利益喪失事由」に該当し、借入金を一括請求する根拠が発生します。この段階で個人信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されるのが一般的です。
- 代位弁済予告通知:住宅ローンを借りる際には、金融機関とは別に保証会社と保証委託契約を結んでいます。「万が一、住宅ローンを返済できなくなった場合には、あなたに代わり保証会社が金融機関へ残金を全額立て替えて支払います」というものです。
- 期限の利益の喪失通知:期限の利益の喪失とは、簡単にいうと「分割でローンを支払っていくという契約に違反したため、分割という利益を失い、一括で返済しなければならなくなった」ということです。
- 代位弁済通知:保証会社があなたに代わってローン残金を支払ったこと、債権者が金融機関から保証会社に切り替わったこと、このまま支払わないと不動産を競売にかけることなどが書かれています。この通知が届いた時点で残金はすでに保証会社から金融機関に一括で支払われており、以後は保証会社から住宅ローンの残金と遅延損害金(代位弁済日の翌日から完済までの利息)の一括支払いを求められます。
代位弁済(予告)通知は事実上の最後通牒となります。この時点で住宅ローン残金と延滞損害金を一括で払うのは、大半の人にとって難しいからです。
本来は、1回目の延滞をしてしまう前に金融機関へ相談すべきですが、通知書を受け取った段階でも、すぐに連絡して事情を伝えてください。1ヶ月分でも支払えば、代位弁済までの期間を延長してもらえる可能性があります。
4回以上継続して滞納(4ヶ月目の滞納)
ローン残高+遅延損害金を一括で支払えなければ、債権者(保証会社)が裁判所に競売を申し立てます。その結果、裁判所から「担保不動産競売開始決定通知書」が届き、同時に物件の登記簿に差押登記がされ、自由に売却できなくなります。
競売では市場価格より2〜3割ほど低い価格で落札されることが多く、家を失ったうえに残債が残ってしまう可能性が高くなります。
滞納の記録は信用情報に最長5年、破産なら7年残る
延滞の記録は個人信用情報機関に登録され、その後の借り換えや自動車ローン、クレジットカードの審査で照会されます。全国銀行協会が運営する全国銀行個人信用情報センターの場合、延滞や代位弁済の事実を含む取引情報は、契約期間中と、契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間登録されます。
自己破産や民事再生の手続きに進むと、その開始決定が官報情報として7年を超えない期間登録されます。登録期間は以前の10年から短縮されました。それでも、数か月の滞納が家を手放した後も長く借入の審査に影響するのは、こうした登録の仕組みがあるからです。
返済条件の変更そのものは、延滞や代位弁済とは扱いが異なります。条件変更が信用情報にどう記録されるかは金融機関の運用によって差があるため、相談の際に借入先へ直接尋ねておけば、その後の借り換えや買い替えの計画を立てやすくなります。
5年ルール・125%ルールは「猶予」であって「免除」ではない
変動金利で借りている場合、多くの住宅ローンには返済額が急に跳ね上がらないための「5年ルール」(5年間は毎月の返済額を据え置く)と「125%ルール」(見直し後の返済額は直前の1.25倍が上限)という激変緩和の仕組みがあります。
この仕組みには、次のような限界があります。
- すべての住宅ローンに付いているわけではありません。ネット銀行の一部など、これらのルールを設けていない商品もあります。
- 金利上昇そのものが免除されるわけではありません。返済額が据え置かれても、金利が上がれば返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースは落ちます。
- 据え置かれた分は先送りされるだけです。元金が想定どおり減らなければ、返済期間の最終回にまとまった残額の支払いが生じることもあります。
金利が1〜2%上がっても返済を続けられるかを早めに試算し、手元資金に余裕を持たせておけば、収入が減ったときに選べる方法が増えます。試算は金融機関のシミュレーションや住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションでも行えます。
破綻を防ぐために、延滞する前にできること
急な出費や収入減で毎月の返済が苦しくなったときは、少しでも早く動くことが何より大切です。家計の支出を見直したうえで、延滞する前に金融機関へ返済計画の見直し(リスケジュール)を相談してください。
金融機関にとっても、一括で回収するより毎月の返済を続けてもらうほうが合理的です。金融庁も、住宅ローンの返済に困った顧客の条件変更に柔軟に対応するよう、金融機関へ要請してきました(金融庁「住宅ローン等に係る条件変更」)。延滞前の相談であれば、返済を続けるための条件を金融機関と一緒に探す時間も十分に取れます。
相談すると使える主な選択肢
| 見直しの方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 返済期間の延長 | 総返済回数を増やして毎月の返済額を下げる | 総支払利息は増える。完済時年齢の上限がある |
| 元金の一時据え置き | 一定期間は利息のみの支払いにして負担を軽くする | 据置期間の後は返済額が上がる |
| ボーナス返済の見直し | ボーナス返済の割合縮小や取りやめで月々の配分を調整 | 毎月の返済額は増える方向に動く |
返済期間を10年延ばすと、毎月は約2.3万円軽くなり利息は約215万円増える
返済期間を延ばすと毎月の負担は大きく下がりますが、そのぶん総額では利息が増えます。たとえば残高2,500万円・残り25年・金利年1.5%のローンを10年延ばした場合を、元利均等返済・ボーナス返済なし・金利は最後まで一定という仮定で計算すると、次のようになります。
| 返済期間 | 毎月の返済額 | 利息の合計 |
|---|---|---|
| 残り25年のまま | 約10.0万円 | 約500万円 |
| 10年延ばして35年 | 約7.7万円 | 約715万円 |
毎月の返済額はおよそ2.3万円下がる一方、利息の合計は約215万円増えます。延長は家計が立ち直るまでの時間を確保する手段なので、収入が戻った段階で期間を短くし直せるかどうかも、相談の席で借入先に聞いておく必要があります。
【フラット35】など機構融資の「返済方法変更メニュー」
住宅金融支援機構の融資(【フラット35】を含む)を返済中の人には、公的な返済方法変更のメニューがあります。離職や病気などで返済が難しくなっていることに加え、次のいずれかに当てはまることが利用の条件です。
- 年収が機構への年間総返済額の4倍以下
- 月収が世帯人員×64,000円以下
- 住宅ローン全体の返済負担率が年収に応じた基準を超え、収入が20%以上減っている
条件を満たすと返済期間を最長15年延ばせるほか、失業中の人や収入が20%以上減った人は、元金の支払いを止めて利息だけを払う期間を最長3年設けることもできます。利息だけを払う期間中は、金利を引き下げられる場合があります。
返済方法変更の手数料はかかりません。ただし、変更後も返済を続けられるかの審査があり、希望に添えない場合もあります。手続きの窓口は返済中の金融機関で、条件の詳細は住宅金融支援機構「月々の返済でお困りになったとき」に掲載されています。
機構は、いったん10年延ばした期間を家計の回復後に10年短縮すると、延ばしたままの場合より総返済額を約331万円抑えられるという例を示しています(住宅金融支援機構「返済方法変更(返済期間の延長)を既にご利用いただいたお客さまへ」)。満70歳以上の人向けの特例を含めた使い分けは、フラット35の返済方法変更とシルバー返済特例の記事で紹介しています。
相談の前にそろえておくもの
相談は「苦しいので何とかしてほしい」だけでは進みません。次の材料をそろえて再建プランとして持ち込むと、話が具体的になります。
- 返済予定表(残高・残期間・適用金利がわかるもの)
- 直近の収入資料(源泉徴収票・給与明細・確定申告書など)
- 家計の収支表(削れる支出をすでに削ったことがわかるもの)
- 収入が回復する見込みの説明(復職予定・転職先の条件など、時期を添えて)
- 他の借入の一覧(自動車ローン・カードローン・リボ払いを含む)
住宅ローンの返済を延滞する前に、金融機関へ返済計画の見直しを相談しよう。
病気やケガが原因なら、団信で返済が不要になるかを先に調べる
返済が苦しくなった原因が病気やケガなら、条件変更の相談と並行して、加入している団体信用生命保険(団信)の保障内容を見直す価値があります。団信の保険金でローンが弁済されれば、返済条件を変える必要そのものがなくなるからです。
住宅金融支援機構の新機構団信は、死亡と、身体障害者手帳1級・2級の交付を受けた場合が保障の対象です。新3大疾病付機構団信なら、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で一定の要件に当てはまった場合や、公的介護保険の要介護2以上になった場合にも、残りの返済が不要になります(住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」)。
民間銀行の団信には、病気で働けない状態が一定期間続くと返済額に相当する金額を保障する特約が付いたものもあります。どの状態でいくら支払われるかは商品ごとに違うため、加入時の書類で保障の範囲と請求の手続きを確かめてください。銀行ごとの疾病保障の違いは、団信の疾病保障と上乗せ金利の銀行別比較で解説しています。
それでも返済のめどが立たないとき
リスケはあくまで「猶予」であって「免除」ではありません。返済再開の見通しが立たない場合は、競売を待つのではなく任意売却という方法があります。任意売却は、金融機関の同意を得て市場に近い価格で自宅を売却する方法で、競売より高く売れて残債を圧縮しやすく、引っ越し時期などの交渉もしやすいのが利点です。
代位弁済後・競売申立て前であっても、金融機関に相談することで手続きを止められる場合があります。競売の申立て後よりも、申立て前のほうが任意売却に切り替えられる余地は大きいため、通知が届いた時点で動き出せば、残債を減らしやすくなります。
地震や豪雨などの自然災害の影響で返済が難しくなった場合には、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用できることがあります。全国銀行協会を事務局とする研究会がまとめた民間の自主的なルールで、災害救助法が適用された自然災害の被災者が、破産などの法的な手続きによらず、金融機関との話し合いで住宅ローンの減額や免除を受けられる仕組みです。
利用には借入先の同意が必要で、収入や資産の状況によっては一定額の返済が残ることもあります。申し出先は最も多額のローンを借りている金融機関で、概要は政府広報オンラインで紹介されています。
破綻を防ぐ大前提は、身の丈に合った物件を選び、借りられるからといって必要以上に借りないことです。借りられる金額と、返し続けられる金額は同じではありません。借りられる上限より少なく借りておけば、その差が、金利が上がる時期の家計の余裕になります。預貯金ができてもすべてを繰上返済に回さず、手元に自由に使える現金を残しておくことも、金利上昇や収入減への備えになります。
金融機関からの通知は、自分がいまどの段階にいるかを知らせる情報でもあります。返済方法の変更や団信の条件は金融機関ごとに異なり、改定されることもあります。相談の際は、借入先の最新の条件表と手元の契約書を基にしてください。
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