住宅ローンの返済計画を家計簿で見直す家庭のイメージ

2024年以降の日銀の金融政策の転換により、長く続いた「金利のない世界」が終わり、変動金利にも上昇圧力がかかる局面に入りました。大手銀行は2026年8月に短期プライムレートを引き上げる方針で、変動型の住宅ローン金利は秋以降に見直される見込みです。金利が上がれば毎月の返済額も増える可能性があり、家計に余裕が少ない世帯ほど返済負担が重くなります。

病気やケガ、勤務先の業績悪化、ボーナス減、離職など、収入が減る事情は誰にでも起こり得ます。もし返済が難しくなってしまったら、住宅ローンはどうなるのでしょうか。ここでは滞納が進むとどうなるのかという流れと、破綻を防ぐために早めに打てる手を整理します。

返済を滞納するとどうなるのか

住宅ローンの返済を滞納すると、金融機関(保証会社)からどのような通知が届くのか、段階を追って見ていきましょう。

1回の滞納

基本的には、金融機関から口座引き落としができない旨の連絡が電話で来たり、はがきや封書で「未払いのお知らせ」といったものが届いたりします。いきなり競売になることや、一括請求されることはありません。

ただし、毎月の返済額に延滞損害金が加算されます。加算額はおおむね年14%前後(1年を365日とする日割り計算)で算出されるのが一般的ですが、利率は契約によって異なるため、正確な率はご自身の金銭消費貸借契約書でご確認ください。さらに、延滞が続くと遅延情報が個人信用情報機関に登録され、将来の借り換えや買い替えで再び住宅ローンを利用することが難しくなります。

2回以上継続して滞納(2ヶ月目の滞納)

競売予告通知が送られてくる場合があります。競売予告通知とは、「このまま滞納を続けると最終的に競売にかけられます。早急に滞納分をお支払いください」という通知です。

3回以上継続して滞納(3ヶ月目の滞納)

滞納が3ヶ月以上続くと、金銭消費貸借契約書上の「期限の利益喪失事由」に該当し、借入金を一括請求する根拠が発生します。この段階で個人信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されるのが一般的です。

  • 代位弁済予告通知:住宅ローンを借りる際には、金融機関とは別に保証会社と保証委託契約を結んでいます。「万が一、住宅ローンを返済できなくなった場合には、あなたに代わり保証会社が金融機関へ残金を全額立て替えて支払います」というものです。
  • 期限の利益の喪失通知:期限の利益の喪失とは、簡単にいうと「分割でローンを支払っていくという契約に違反したため、分割という利益を失い、一括で返済しなければならなくなった」ということです。
  • 代位弁済通知:保証会社があなたに代わってローン残金を支払ったこと、債権者が金融機関から保証会社に切り替わったこと、このまま支払わないと不動産を競売にかけることなどが書かれています。この通知が届いた時点で残金はすでに保証会社から金融機関に一括で支払われており、以後は保証会社から住宅ローンの残金と遅延損害金(代位弁済日の翌日から完済までの利息)の一括支払いを求められます。

代位弁済(予告)通知は事実上の最後通牒となります。この時点で住宅ローン残金と延滞損害金を一括で払うのは、大半の人にとって現実的ではないからです。

本来は、1回目の延滞をしてしまう前に金融機関へ相談すべきですが、通知書を受け取ったら直ちに連絡して相談しましょう。1ヶ月分でも支払えば、代位弁済までの期間を延長してもらえる可能性があります。

4回以上継続して滞納(4ヶ月目の滞納)

ローン残高+遅延損害金を一括で支払えなければ、債権者(保証会社)が裁判所に競売を申し立てます。その結果、裁判所から「担保不動産競売開始決定通知書」が届き、同時に物件の登記簿に差押登記がされ、自由に売却できなくなります。

競売では市場価格より20〜30%ほど割安で落札されることが多く、家を失ったうえに残債を返済してもなお借金が残ってしまう可能性が高くなります。

金利上昇局面で返済負担が増えたときの備え

変動金利で借りている場合、多くの住宅ローンには返済額が急に跳ね上がらないための「5年ルール」(5年間は毎月の返済額を据え置く)「125%ルール」(見直し後の返済額は直前の1.25倍が上限)という激変緩和の仕組みがあります。ただし、これらはすべての住宅ローンに付いているわけではなく(ネット銀行の一部などには無いものもあります)、あくまで返済額の急増を和らげる仕組みで、金利上昇そのものが免除されるわけではありません。据え置かれた分の利息は先送りされ、最終回にまとめて負担が来ることもあります。

金利上昇に備えるには、金利が1〜2%上がっても返済を続けられるかを早めにシミュレーションしておくこと、そして手元資金に余裕を持たせておくことが大切です。借入時に自分の契約に5年ルール・125%ルールがあるかどうかも確認しておきましょう。

住宅ローン破綻を防ぐためには

急な出費や収入減で毎月の返済が苦しくなったときは、少しでも早く対応することが何より大事です。まずは家計の支出を見直し、収入を増やす手立ても考えましょう。そして、返済を延滞する前に金融機関へ返済計画の見直し(リスケジュール)を相談してみてください。

金融機関は、一括で回収するよりも、毎月の返済を続けてもらうほうが利益になります。金融庁も返済が困難な人への柔軟な対応を金融機関に求めているため、延滞前の相談には意外に親身に応じてもらえることが多いのです。主なリスケの選択肢には次のようなものがあります。

  • 返済期間の延長:総返済回数を増やして毎月の返済額を下げる(総支払利息は増える点に注意)。
  • 一定期間の元金据え置き:一時的に利息のみの支払いにして負担を軽くする(フラット35では元金据え置き最長3年・返済期間の延長は最長15年などの上限があります)。
  • ボーナス返済割合の縮小・見直し:ボーナス減で苦しい場合に月々の配分を調整する。

リスケはあくまで「猶予」であって「免除」ではありません。相談の際は「いつ頃収入が回復する見込みか」「どの支出を削るのか」といった再建プランを示すと話が進みやすくなります。

それでも返済のめどが立たない場合は、競売を待つのではなく任意売却という選択肢もあります。任意売却は、金融機関の同意を得て市場に近い価格で自宅を売却する方法で、競売より高く売れて残債を圧縮しやすいのが利点です。代位弁済後・競売申立て前であっても、金融機関に相談することで競売の手続きを止められる場合があります。

破綻を防ぐ大前提は、身の丈に合った物件を選び、低金利だからと必要以上に借りないことです。「借りられる額」=「返済できる額」ではありません。また、預貯金ができてもすぐに繰上返済へ回さず、手元に自由に使える現金を必ず残しておくことも、金利上昇や収入減への備えになります。金融機関からの通知には必ず目を通し、内容を確認しましょう。

point_icon 住宅ローンの返済が延滞する前に、金融機関へ返済計画の見直しを相談しよう。

よくある質問

Q. 変動金利が上がって返済が苦しくなりそうです。どうすればいい?
まずは金利が1〜2%上がった場合の返済額をシミュレーションし、続けられそうにないと感じた段階で早めに金融機関へ相談しましょう。返済期間の延長や元金据え置きなどのリスケで、当面の負担を抑えられる可能性があります。延滞してからでは選べる手が狭まるため、「延滞する前の相談」が鉄則です。

Q. 滞納の記録(事故情報)は何年くらい残りますか?
延滞などの事故情報は、個人信用情報機関におおむね5年間登録されるのが一般的です。この間は借り換えや新規のローン・クレジットの利用が難しくなります。

Q. 任意売却と競売はどう違いますか?
競売は裁判所の手続きで強制的に売却され、市場価格より2〜3割安くなりやすいのに対し、任意売却は金融機関の同意のもとで市場に近い価格で売却できるため、残債を圧縮しやすく、引っ越し時期などの交渉もしやすい傾向があります。競売の申立て前であれば任意売却に切り替えられる場合があるので、早めに相談することが大切です。

 

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