住宅ローンの返済計画を家計簿で見直す家族のイメージ

長く続いた「金利のない世界」は終わりました。日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げ、7月末の会合では据え置いています。変動金利で借りている人にとっては、毎月の返済額が増える可能性を現実の前提として考えるべき局面に入りました。

そこへ、病気やケガ、勤務先の業績悪化、ボーナス減、離職といった収入減が重なると、返済は一気に苦しくなります。もし返済が難しくなったら、住宅ローンはどうなるのでしょうか。ここでは滞納が進むと何が起きるのかという流れと、破綻を防ぐために早めに打てる手を、公的機関の制度まで含めて整理します。

2026年9月時点:変動金利は「全行が同時に上がる」わけではない

まず前提を正しておきます。日銀の利上げは、すべての銀行の変動金利に同じタイミングで反映されるわけではありません。

多くの銀行の変動金利は短期プライムレートを基準に、年2回(4月と10月)見直され、その結果が数か月後の適用金利に反映される仕組みになっています。そのため、6月の利上げがいつ手元の金利に効いてくるかは銀行によってばらつきます。

実際、2026年9月の適用金利を見ると、大手5行のうち変動金利を引き上げたのは2行で、残る3行は据え置きでした。引き上げた2行の最優遇金利は三菱UFJ銀行が年1.195%、三井住友銀行が年1.525%(いずれも引き上げ幅0.250%)です。ネット系でもドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)や楽天銀行が9月に引き上げた一方、据え置いた銀行もあります。

さらに重要なのが、適用金利が上がった時点と、毎月の返済額が変わる時点は別だということです。金利改定が返済額に反映される時期は銀行や契約タイプ(毎月見直し型・年2回見直し型など)で異なります。「ニュースで上がったと聞いたから、来月から返済額が増える」とは限りません。

最初にやるべきは「自分の適用金利を確認すること」

報道されるのは各行の最優遇金利で、これは条件を満たした人に適用される金利です。あなたに実際に適用されている金利ではありません。返済が不安なら、まず返済予定表(償還予定表)とインターネットバンキングの契約内容で、①現在の適用金利 ②残高と残りの返済期間 ③次の金利見直し時期 ④5年ルール・125%ルールの有無、の4点を確認してください。話はそこから始まります。

返済を滞納するとどうなるのか

住宅ローンの返済を滞納すると、金融機関(および保証会社)からどのような通知が届くのか、段階を追って見ていきましょう。

1回の滞納

基本的には、金融機関から口座引き落としができない旨の連絡が電話で来たり、はがきや封書で「未払いのお知らせ」といったものが届いたりします。いきなり競売になることや、一括請求されることはありません。

ただし、毎月の返済額に延滞損害金が加算されます。年14%前後(1年を365日とする日割り計算)と定めている契約が多く見られますが、利率は契約ごとに異なるため、正確な率はご自身の金銭消費貸借契約書でご確認ください。さらに、延滞が続くと遅延情報が個人信用情報機関に登録され、将来の借り換えや買い替えで再び住宅ローンを利用することが難しくなります。

2回以上継続して滞納(2ヶ月目の滞納)

競売予告通知が送られてくる場合があります。競売予告通知とは、「このまま滞納を続けると最終的に競売にかけられます。早急に滞納分をお支払いください」という通知です。

3回以上継続して滞納(3ヶ月目の滞納)

滞納が3ヶ月以上続くと、金銭消費貸借契約書上の「期限の利益喪失事由」に該当し、借入金を一括請求する根拠が発生します。この段階で個人信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されるのが一般的です。

  • 代位弁済予告通知:住宅ローンを借りる際には、金融機関とは別に保証会社と保証委託契約を結んでいます。「万が一、住宅ローンを返済できなくなった場合には、あなたに代わり保証会社が金融機関へ残金を全額立て替えて支払います」というものです。
  • 期限の利益の喪失通知:期限の利益の喪失とは、簡単にいうと「分割でローンを支払っていくという契約に違反したため、分割という利益を失い、一括で返済しなければならなくなった」ということです。
  • 代位弁済通知:保証会社があなたに代わってローン残金を支払ったこと、債権者が金融機関から保証会社に切り替わったこと、このまま支払わないと不動産を競売にかけることなどが書かれています。この通知が届いた時点で残金はすでに保証会社から金融機関に一括で支払われており、以後は保証会社から住宅ローンの残金と遅延損害金(代位弁済日の翌日から完済までの利息)の一括支払いを求められます。

代位弁済(予告)通知は事実上の最後通牒となります。この時点で住宅ローン残金と延滞損害金を一括で払うのは、大半の人にとって現実的ではないからです。

本来は、1回目の延滞をしてしまう前に金融機関へ相談すべきですが、通知書を受け取ったら直ちに連絡して相談しましょう。1ヶ月分でも支払えば、代位弁済までの期間を延長してもらえる可能性があります。

4回以上継続して滞納(4ヶ月目の滞納)

ローン残高+遅延損害金を一括で支払えなければ、債権者(保証会社)が裁判所に競売を申し立てます。その結果、裁判所から「担保不動産競売開始決定通知書」が届き、同時に物件の登記簿に差押登記がされ、自由に売却できなくなります。

競売では市場価格より2〜3割ほど低い価格で落札されることが多く、家を失ったうえに残債が残ってしまう可能性が高くなります。

5年ルール・125%ルールは「猶予」であって「免除」ではない

変動金利で借りている場合、多くの住宅ローンには返済額が急に跳ね上がらないための「5年ルール」(5年間は毎月の返済額を据え置く)「125%ルール」(見直し後の返済額は直前の1.25倍が上限)という激変緩和の仕組みがあります。

ただし注意点が3つあります。

  • すべての住宅ローンに付いているわけではありません。ネット銀行の一部など、これらのルールを設けていない商品もあります。
  • 金利上昇そのものが免除されるわけではありません。返済額が据え置かれても、金利が上がれば返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースは落ちます。
  • 据え置かれた分は先送りされるだけです。元金が想定どおり減らなければ、返済期間の最終回にまとまった残額の支払いが生じることもあります。

備えとして有効なのは、金利が1〜2%上がっても返済を続けられるかを早めに試算し、手元資金に余裕を持たせておくことです。試算は金融機関のシミュレーションや住宅金融支援機構のローンシミュレーションでも行えます。

破綻を防ぐために、延滞する前にできること

急な出費や収入減で毎月の返済が苦しくなったときは、少しでも早く動くことが何より重要です。まずは家計の支出を見直し、そのうえで延滞する前に金融機関へ返済計画の見直し(リスケジュール)を相談してください。

金融機関にとっても、一括で回収するより毎月の返済を続けてもらうほうが合理的です。金融庁も、返済が困難になった債務者への貸付条件の変更等に柔軟に対応するよう金融機関へ求めています。延滞前の相談は、思っているより前向きに受け止められます。

相談すると使える主な選択肢

見直しの方法内容注意点
返済期間の延長総返済回数を増やして毎月の返済額を下げる総支払利息は増える。完済時年齢の上限がある
元金の一時据え置き一定期間は利息のみの支払いにして負担を軽くする据置期間の後は返済額が上がる
ボーナス返済の見直しボーナス返済の割合縮小や取りやめで月々の配分を調整毎月の返済額は増える方向に動く

【フラット35】など機構融資の「返済方法変更メニュー」

住宅金融支援機構の融資を利用している場合は、返済方法変更のメニューが公的に用意されています。離職や病気などの事情で返済が困難になっている人については、返済期間の延長(最長15年)や、元金の支払いを一時休止して利息のみを支払う期間の設定(最長3年)ができます。毎月返済額とボーナス返済額の内訳変更、ボーナス返済の取りやめも可能です。

返済方法変更の手数料はかかりません。ただし、変更中および変更期間終了後に返済を継続できるかを確認する審査があり、希望に添えない場合もあります。手続きは返済中の金融機関が窓口です。詳細は住宅金融支援機構の「返済方法変更のメニュー」でご確認ください。

相談の前にそろえておくもの

相談は「苦しいので何とかしてほしい」だけでは進みません。次の材料をそろえて「再建プラン」として持ち込むと、話が具体化します。

  • 返済予定表(残高・残期間・適用金利がわかるもの)
  • 直近の収入資料(源泉徴収票・給与明細・確定申告書など)
  • 家計の収支表(削れる支出をすでに削ったことがわかるもの)
  • 収入が回復する見込みの説明(復職予定・転職先の条件など、時期を添えて)
  • 他の借入の一覧(自動車ローン・カードローン・リボ払いを含む)

point_icon 住宅ローンの返済が延滞する前に、金融機関へ返済計画の見直しを相談しよう。

それでも返済のめどが立たないとき

リスケはあくまで「猶予」であって「免除」ではありません。返済再開の見通しが立たない場合は、競売を待つのではなく任意売却という選択肢があります。任意売却は、金融機関の同意を得て市場に近い価格で自宅を売却する方法で、競売より高く売れて残債を圧縮しやすく、引っ越し時期などの交渉もしやすいのが利点です。代位弁済後・競売申立て前であっても、金融機関に相談することで手続きを止められる場合があります。

また、地震や豪雨などの自然災害の影響で返済が難しくなった場合には、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用できることがあります。一定の要件を満たせば、法的な倒産手続によらず、債権者との合意にもとづいて債務を整理するための準則です(全国銀行協会)。詳細は東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関で確認できます。

破綻を防ぐ大前提は、身の丈に合った物件を選び、借りられるからといって必要以上に借りないことです。「借りられる額」=「返済できる額」ではありません。金利が上がる局面ではこの差がそのまま家計の余力になります。預貯金ができてもすべてを繰上返済に回さず、手元に自由に使える現金を残しておくことも、金利上昇や収入減への備えになります。金融機関からの通知には必ず目を通してください。

よくある質問

Q. 変動金利が上がったとニュースで見ました。来月から返済額も上がりますか?
必ずしもそうではありません。適用金利の改定時期と、毎月の返済額に反映される時期は別で、銀行や契約タイプによって異なります。また、報道される数字は各行の最優遇金利であって、あなたの適用金利とは限りません。まず返済予定表と契約内容で、自分の適用金利・次の見直し時期・5年ルールの有無を確認してください。

Q. 金利が上がって返済が苦しくなりそうです。どうすればいい?
金利が1〜2%上がった場合の返済額を試算し、続けられそうにないと感じた段階で早めに金融機関へ相談しましょう。返済期間の延長や元金据え置きなどで、当面の負担を抑えられる可能性があります。延滞してからでは選べる手が狭まるため、「延滞する前の相談」が鉄則です。

Q. 滞納の記録(事故情報)は何年くらい残りますか?
全国銀行個人信用情報センターの場合、延滞や代位弁済などの事実を含む取引情報は、契約期間中および契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間登録されます。自己破産などの官報情報は登録期間が7年です(2022年11月に10年から短縮)。この間は借り換えや新規のローン・クレジットの利用が難しくなります。

Q. リスケジュールをすると、信用情報に傷が付きますか?
返済条件の変更そのものは、延滞や代位弁済とは扱いが異なります。ただし登録の扱いは金融機関の運用によって差があるため、相談時に「今回の変更が信用情報にどう記録されるか」を必ず確認してください。少なくとも、延滞を重ねてから条件変更するより、延滞前に相談するほうが選択肢は広いという点は変わりません。

Q. 任意売却と競売はどう違いますか?
競売は裁判所の手続きで強制的に売却され、市場価格より2〜3割安くなりやすいのに対し、任意売却は金融機関の同意のもとで市場に近い価格で売却できるため、残債を圧縮しやすく、引っ越し時期などの交渉もしやすい傾向があります。競売の申立て前であれば任意売却に切り替えられる場合があるので、早めに相談することが大切です。

 

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住宅ローン比較ネット 編集部

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