変動金利の上昇に備えて家計の返済計画を見直す夫婦のイメージ

かつて「変動金利は当面上がらない」というのが住宅ローン選びの常識でした。しかし2024年3月のマイナス金利政策の解除を境に状況は大きく変わり、日本銀行は段階的な利上げを続けています。2026年6月16日の金融政策決定会合では政策金利(無担保コールレート翌日物)の誘導目標が年0.75%程度から年1.0%程度へ引き上げられ、約31年ぶりの水準となりました。続く7月30・31日の会合では年1.0%程度で据え置かれています。

 

そして2026年8月、変動金利をめぐる話題は「上がりそうだ」という観測から、銀行が公表したスケジュールへと段階が変わりました。三菱UFJ銀行は自社サイトで、2026年9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直すこと、そして既に借りている人の返済額にいつ反映されるかまで公表しています。

 

この記事では、2026年8月時点の一次情報をもとに、変動金利がどう動いているのか、5年後の水準をどう見ておくべきかを整理します。ただし何十年も先の金利を正確に当てることは誰にもできません。ここでは予想の的中よりも、「なぜそうなるのか」という仕組みと、総支払額で見た備え方に重点を置きます。

変動金利の「基準」はどこで決まるのか

変動金利は、銀行が業績のよい企業へ1年未満の短期で貸し出すときの最優遇金利である「短期プライムレート(短プラ)」に連動します。短プラは日銀の政策金利の影響を強く受けるため、政策金利が上がれば変動金利の基準金利(店頭表示金利)も上がるのが原則です。

日本銀行の統計によると、主要行の短期プライムレートの最頻値は年2.125%(2026年2月9日実施以降。最高値 年2.375%/最低値 年2.125%。2026年7月9日現在の公表値)となっています。長らく年1.475%で動かなかった短プラが、この2年で明確に切り上がったことがわかります。

 

ここで混同しやすいのが「長期プライムレート(長プラ)」です。長プラは主に大企業向けの1年超の融資の最優遇金利で、長期金利(国債利回り)などを反映して毎月見直されます。2026年8月には30年ぶりの高水準になったと報じられましたが、長プラが上がっても、それだけで住宅ローンの変動金利が上がるわけではありません。変動金利の基準は短プラ、全期間固定や当初固定の基準は長期金利——というように、動く理由も時期も別だと覚えておくと、金利のニュースに振り回されずに済みます。

2026年8月時点で実際に起きていること

三菱UFJ銀行は「9月1日から毎月見直し」を公表済み

三菱UFJ銀行は、2026年6月16日発表の短期プライムレート引き上げに伴い、2026年9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直すと公式に告知しています。9月の基準金利は2026年8月31日に発表され、以降は毎月1日を基準日として見直す形に変わります(従来の年2回の定例見直しからの変更)。

 

すでに借りている人については、契約している変動金利の種類によって反映時期が異なることまで公表されています。

金利の種類直近の見直しの基準日返済額に反映される時期
変動金利(毎月型)2026年9月1日2026年10月の返済日の翌日(2026年11月の約定返済分より)
変動金利(年2回型)2026年10月1日2026年12月の返済日の翌日(2027年1月の約定返済分より)

出典:三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」(2026年6月17日現在の公表内容)。当初借入日が2008年12月以前のローンなど、このルールに基づかない場合があるとされています。

 

ここで大事なのは、9月の基準金利の「数値」はまだ公表されていないという点です(発表は8月31日の予定)。上げ幅を先回りして語る記事もありますが、確定していない数字を前提に借入計画を組むのは避けたほうが賢明です。

基準金利が上がっても、返済額がすぐ増えるとは限らない

もう一つ誤解が多いのが、「基準金利が上がる=来月から返済額が増える」という理解です。実際には、次の2段階のクッションが入ります。

  • 適用金利=基準金利−引下げ幅。引下げ幅(優遇幅)は契約時に決まり、完済まで変わらない商品が一般的です。たとえば三菱UFJ銀行の「ずーっと一律優遇コース」は、店頭表示金利より完済まで年▲2.180%(新規借り入れの場合)と説明されています。
  • 元利均等返済なら「5年ルール」。同行のQ&Aには「変動金利かつ元利均等返済で借入中の場合、10月1日を基準とした5年間は返済額に変更はありません(返済額の元金分と利息分の割合は変わります)」と明記されています。ただし元金均等返済には5年ルール・125%ルールはありません

 

逆にいえば、返済額が据え置かれている間も利息の負担そのものは増えているということです。5年ルールは「支払いを平準化する仕組み」であって「金利上昇を打ち消す仕組み」ではありません。ここを取り違えると、5年後に返済額が見直された時点で慌てることになります。なお、ソニー銀行・SBI新生銀行・PayPay銀行など、5年ルール・125%ルールを設けていない銀行もあります。上昇が早く返済額に反映される代わりに、未払利息が生じにくい仕組みです。ご自身のローンがどちらなのかは、契約書か各行の公式サイトで必ず確認しておきましょう。

新規に借りる場合の水準(2026年8月)

参考までに、三菱UFJ銀行が公表している2026年8月の適用金利は、新規借り入れの変動金利が年0.945%(店頭表示金利 年3.125%)、借り換えが年0.995%(同)です(2026年8月1日現在)。基準となる店頭表示金利が長く年2.475%だったことを思えば、基準金利の水準自体はすでに大きく切り上がっています。

 

当編集部が2026年8月4日に主要14の金融機関・機関の公式金利ページを実際に確認し、127件の適用金利を集計したところ、前月と比較できた127件のうち102件(80.3%)が引き上げ、23件が据え置き、2件が引き下げでした(当社調べ)。金利タイプや商品によって差はあるものの、上昇方向の動きが広く及んでいることがわかります。

借り手の選択はどう変わってきたか

金利が上がり始めた今でも、実際に借りた人が選んでいる金利タイプの中心は変動型です。ただし、その比率は静かに動いています。

 

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査」(2026年1月調査・2025年4月〜9月に借り入れた1,237人が対象)によると、利用した金利タイプは変動型75.0%・固定期間選択型14.9%・全期間固定型10.1%。前回(2025年4月調査)と比べると変動型が4.0ポイント減り、固定期間選択型が2.7ポイント、全期間固定型が1.3ポイント増えました。

利用した住宅ローンの金利タイプの割合。2026年1月調査では変動型75.0%、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%
変動型が4.0ポイント減り、固定期間選択型・全期間固定型が増えた(2026年1月調査は2025年4〜9月の借入者1,237人が対象)

これから借りる人はさらに慎重です。同時に実施された「住宅ローン利用予定者調査」では、希望する金利タイプは変動型37.0%・固定期間選択型32.1%・全期間固定型30.9%とほぼ三分されており、全期間固定型は2024年4月調査から4.6ポイント増えています。「実際の契約は変動型が中心だが、これから借りる人の気持ちは固定寄りに動いている」——この二つのズレが、いまの局面をよく表しています。

 

あわせて注目したいのが、同調査で今後1年間の金利見通しを「現状よりも上昇する」と答えた人が73.7%(前回比+8.0ポイント)に達している一方、「将来、金利が上昇した場合に返済額がどれくらい増えるか」について52.0%が「理解しているか少し不安・よく理解していない・全く理解していない」と答えていることです。上がることは分かっているのに、いくら増えるかは分からない。この状態が、いちばん危ういと言えます。

政策金利はどこまで来たか

変動金利の先行きを考えるうえで欠かせないのが、日銀の政策金利の動きです。日本では2016年1月から−0.1%の「マイナス金利政策」が約8年間続きましたが、賃金と物価がそろって上昇する環境が整ってきたことを受けて、日銀は金融政策の正常化に踏み出しました。

政策金利の推移。2024年3月のマイナス金利解除から段階的に引き上げられ2026年6月に1.0%程度へ
2024年3月は「0〜0.1%程度」への変更。各時点の変更後の水準を示している(2026年7月30・31日の会合では1.0%程度で据え置き)
  • 2024年3月:マイナス金利政策を解除(誘導目標を0~0.1%程度に)
  • 2024年7月:0.25%程度へ
  • 2025年1月:0.5%程度へ
  • 2025年12月:0.75%程度へ
  • 2026年6月16日:1.0%程度へ(約31年ぶりの水準)

直近の2026年7月30・31日の会合では年1.0%程度で据え置きとなりました。次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日です。追加利上げの時期については市場でも見方が分かれており、確定した予定ではありません。

5年後の変動金利の水準は?

【結論】緩やかな上昇の継続を前提に備えるのが現実的

住宅ローン比較ネットの編集部では、今後5年間は「緩やかな利上げが続く」ことをメインシナリオとして備えるのが現実的だと考えています。なお、本記事の過去版(2022年)では「5年後も現状と同水準」と予想していましたが、マイナス金利解除という前提の変化を受けて、見通しを改めています。

 

根拠は次のとおりです。

  • 日銀が「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる」という方針を明示していること。
  • 実際に短期プライムレートが年2.125%まで切り上がり、三菱UFJ銀行のように基準金利の見直しを年2回から毎月へ変更する銀行が出ていること(=金利変更が反映されるサイクル自体が速くなっている)。
  • 景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」を年1.0%~1.5%程度とみる見方がエコノミストの間で多く、政策金利がその水準へ段階的に近づくとの見立てが一般的であること。

 

この前提に立つと、5年後(2031年ごろ)の新規借入の変動金利(最優遇)は、現在の年1.0%前後からもう一段上の水準に達している可能性があります。ただし、これはあくまで現時点の情報に基づく目安です。景気が悪化すれば利上げの停止や利下げへの転換も十分あり得ますし、逆に物価上昇が長引けばより高い水準もあり得ます。「この水準で止まる」と断定できるものではない点にはご注意ください。最新の適用金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

予想を当てるより「総支払額の耐性」を測る

当サイトが繰り返しお伝えしているのは、金利の予想を当てることより、金利が上がっても家計が耐えられる状態にしておくことのほうがはるかに重要だという点です。しかも耐性を測るときは、表面金利だけでなく総支払額——事務手数料・保証料・団信の上乗せ金利まで含めた合計——で見る必要があります。

 

たとえば当編集部が2026年8月の各行公式金利を実測して試算したところ、借入3,000万円・35年・元利均等・ボーナス返済なしの条件では、三菱UFJ銀行の変動金利 年0.945%で月々の返済額は83,918円でした(当社試算。金利のみの試算で、事務手数料・保証料・団信の上乗せ・登記費用などの諸費用は含みません)。事務手数料は借入金額の2.20%(税込)が一般的で、3,000万円なら66万円(税込)ほど。金利差0.100%前後の優劣は、この諸費用で簡単に逆転します

 

確認しておきたいのは次の3点です。

  • 返済額の上昇耐性:いまの借入条件で金利が1%上がったら毎月いくら増えるか。増加分を貯蓄や繰上返済の余力で吸収できるかどうかが目安になります。各行の公式サイトには返済額シミュレーションが用意されています。
  • 「5年ルール」「125%ルール」の有無:上で見たとおり銀行によって異なり、元金均等返済では適用されません。自分のローンがどちらの扱いかを把握しておきましょう。
  • 固定への切り替え・借り換えは総支払額で判断:固定金利はすでに変動金利よりかなり高いため、切り替えれば総返済額は増えやすくなります。金利差だけでなく、事務手数料・保証料・団信を含めた合計で比較してください。保証料0円で事務手数料が定率、団信の上乗せも分かりやすいSBI新生銀行のように、費用構造が読み取りやすい銀行は比較の基準として置きやすい選択肢です。

属性別に見た「金利上昇への備え」でよくある質問

Q. 収入に波がある自営業ですが、変動と固定のどちらで備えるべきですか?
金利タイプそのものより、返済額が変わらない期間の長さで考えると整理しやすくなります。収入が読みにくいほど、返済額が確定している期間は長いほうが計画を立てやすい一方、固定金利は現状かなり高いため総支払額は増えがちです。変動を選ぶなら、繰上返済に回せる手元資金を厚めに持って上昇分を吸収できるようにしておく、という形で補うのが現実的です。

 

Q. ペアローンだと、金利が上がったときの影響も2倍になりますか?
返済額の増加という意味では、2本の契約それぞれに金利上昇が及びます。ただし世帯としての借入総額が同じであれば、上昇による利息の増加額そのものが2倍になるわけではありません。むしろ注意したいのは、契約が2本になることで事務手数料・印紙税・登記費用など「1本あたり固定でかかる費用」が2重に発生する点です。金利上昇局面では、この初期費用の差が借り換えのハードルにもなります。

 

Q. 転職を考えていますが、金利が上がる前に借り換えを済ませるべきでしょうか?
借り換えの審査では勤続年数が見られる商品が多く、転職直後は選べる銀行が減りがちです。ただし「金利上昇を先回りするため」だけを理由に急ぐと、諸費用を回収できないまま乗り換えることになりかねません。借り換えは、金利差・残存期間・残高・諸費用の4つがそろって初めてメリットが出ます。転職の時期が近いなら、まず現在の契約に5年ルールがあるか、次の見直し基準日はいつかを確認し、判断の期限を把握するところから始めてください。

 

Q. 基準金利が上がると、契約時に決めた引下げ幅も縮みますか?
一般的な商品では、引下げ幅(優遇幅)は契約時に決まり、その後の基準金利の変動によって縮むことはありません。ただし条件は商品ごとに異なり、一定の条件を満たさなくなった場合に優遇が変わる商品もあります。ご自身の契約内容は、契約書または各金融機関の公式サイトでご確認ください。

まとめ

2026年8月時点で言えるのは、変動金利をめぐる話が「予想」から「銀行が公表したスケジュール」へ移ったということです。三菱UFJ銀行は9月1日からの基準金利見直しと、既存借入者への反映時期(毎月型は2026年11月の約定返済分、年2回型は2027年1月の約定返済分)まで公表しています。9月の基準金利の数値は8月31日に発表される予定です。

 

やるべきことは、上げ幅を当てにいくことではありません。自分のローンの見直しサイクルと5年ルールの有無を把握し、金利が1%上がっても回るかどうかを総支払額ベースで確かめておく——この2つで、たいていの局面には対応できます。そのうえで借り換えや新規借り入れを検討するなら、金利だけでなく事務手数料・保証料・団信まで並べて、複数行の条件を同じ土俵で比べてみてください。