住宅ローンの返済中に起こるリスクへの備えのイメージ

住宅ローンで備えておきたいリスクは、金利上昇、収入の減少と支出の増加、病気やケガ、離婚、転勤、災害の6つです。どれも30年以上続く返済の途中で起こり得るもので、借りる前に対策を決めておけば、いざというときに返済を続けられる余地が残ります。

変動金利で借りた場合には金利上昇リスクがありますし、返済期間中の病気やケガ、勤めていた会社の倒産といったことも考えられます。金利の数字だけで住宅ローンを選ぶのではなく、想定外のことが起きても返し続けられるかという視点で、リスクごとの対応策を見ていくと、選ぶべき商品と借入額の目安がはっきりします。

金利上昇リスクは変動金利と固定期間の終わりに表れる

全期間固定金利以外の住宅ローンでは、金利の上昇リスクを考えておく必要があります。

中でも、住宅ローンを借りる人の多くが利用する変動金利型の住宅ローンは、文字どおり金利が変動する代わりに低い金利で借り入れができる金利タイプです。変動金利型は金利が下がれば返済額は減りますが、上昇した場合には返済額が増えてしまいます。

長く超低金利が続いた背景には日銀の金融緩和がありましたが、状況は大きく変わりました。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを進めています。2026年9月18日の金融政策決定会合では、短期金利の誘導水準を1.25%程度へ引き上げることを決め、9月24日から適用しました(日本銀行「金融市場調節方針の変更について」)。

次回の金融政策決定会合は2026年10月29日・30日に予定されており、結果は30日に公表されます(日本銀行「金融政策決定会合の運営」)。会合の結果がどうであれ、変動金利で借りている人の返済に影響が出るのは数か月先になるため、いまの時点で返済予定を見直しておく意味があります。

物価指標はどの指標かで見え方が変わる

金利の先行きを考えるときによく引き合いに出される消費者物価指数(CPI)は、どの指標を見るかで水準が違います。総務省が2026年10月23日に公表した9月の全国消費者物価指数では、生鮮食品を除く総合(いわゆるコアCPI)が前年同月比2.1%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は2.4%の上昇でした(総務省統計局「消費者物価指数 全国」)。

同じ月でもエネルギーを含むかどうかで0.3ポイントの差があり、日銀も基調的な物価の動きを見るための指標を別に公表しています。CPIの数字だけで金利の動きを決めつけることはできないため、ニュースで見た数字がどの指標のものかを確かめたうえで、金利タイプを判断する必要があります。

短期プライムレートは2026年11月に再び引き上げ

変動金利型住宅ローンの基準金利は、主に銀行の短期プライムレート(短プラ)に連動します。三菱UFJ銀行は2026年11月2日に、三井住友銀行は11月9日に、短期プライムレートを年2.375%から年2.625%へ引き上げます(各行の2026年9月のニュースリリース)。短プラの引き上げは、時間差を置いて変動金利の基準金利へ反映されていきます。

短プラが上がっても毎月の返済額はすぐには変わらず、実際に反映されるのは数か月先です。しかもその時期は、銀行や契約している変動金利の種類によって違います。三菱UFJ銀行が公表している反映スケジュールは、下の表のようになっています。

三菱UFJ銀行の契約タイプ2026年8月の短プラ引き上げの反映2026年11月の短プラ引き上げの反映
変動金利(毎月型)2026年11月の約定返済分から(基準日 2026年9月1日)2027年2月の約定返済分から(基準日 2026年12月1日)
変動金利(年2回型)2027年1月の約定返済分から(基準日 2026年10月1日)2027年7月の約定返済分から(基準日 2027年4月1日)

※2026年10月時点で三菱UFJ銀行が「変動金利の基準金利見直しについて」で公表している内容です。見直し時期は銀行ごとに異なり、契約の種類は「ご返済のお知らせ」に書かれています。

ただし、変動金利には5年ルール(5年間は毎月返済額を据え置く)と125%ルール(見直し後の返済額は従来の125%まで)を採用している銀行が多く、金利が上がってもすぐに毎月の返済額が跳ね上がるわけではありません。その代わり、毎月の返済額が変わらなくても、内訳のうち利息の割合が増え、元金が減りにくくなります。

金利の上がり方が大きいと、利息が毎月の返済額を上回って支払いきれない利息(未払利息)が生じることもあり、据え置かれた分が返済期間の終盤にまとめて残る場合もあります。

また、元金均等返済を選んでいる場合は5年ルール・125%ルールの対象外で、見直しのたびに返済額そのものが変わります。気づかないうちに残高の減りが遅れることがあるため、返済予定表で元金残高の減り方を定期的に確かめておく必要があります。

金利が上がると返済額がどれだけ増えるのかを、ローン残高3,000万円・残り30年の元利均等返済で、仮の金利を使って当編集部で試算しました。5年ルールで返済額が据え置かれている間も、返済額のうち利息に回る分は増えていきます。

適用金利(仮定)毎月の返済額30年間の返済総額
年1.00%約9万6,500円約3,474万円
年1.25%約10万円約3,599万円
年1.50%約10万3,500円約3,727万円
年2.00%約11万900円約3,992万円

※元利均等返済・ボーナス返済なしで、残り30年間その金利が続くと仮定した計算です。実在する銀行の金利ではありません。

金利が0.25%上がるごとに月3,000円台半ばずつ返済額が増え、1%上がると30年間の返済総額は500万円を超えて増えます。この差は家計の余裕資金から払い続けることになるため、金利上昇への備えとしては、固定金利へ借り換える、繰上返済で元金を減らす、上昇分を払える余裕資金を確保しておくといった対策があります。

借り換えで備える場合は、事務手数料(借入金額の2.20%(税込)とする金融機関が多い)や登記費用などの諸費用がかかります。金利差だけで判断せず、諸費用を含めた総支払額で損得を確かめてください。変動金利の注意点は変動金利の落とし穴と金利上昇局面の注意点、借り換えの諸費用は借り換えのデメリットと総コストの判断の記事で紹介しています。

>>住宅ローン金利の動向と予想

収入減少・支出増大リスクには返済額の余裕で備える

物価が上がっても賃金の上昇が追いつかない局面では、家計の余裕は目減りします。月々の返済額の負担が大きい住宅ローンを組んでしまうと、収入が減った場合に返済が困難になることも考えられます。

無理のない返済額としては、手取り(または年収)の25%程度までという目安がよく使われます。無理のない返済額で住宅ローンを組むことが、返済破綻のリスクを減らすことにつながります。低金利の時期には借りられる額をそのまま借りすぎてしまうケースもありましたが、借りられる額と無理なく返せる額は別物です。

また、数十年という返済期間では、子どもの成長に伴う教育費や、親の介護費用が必要になるかもしれません。病気やケガで働けなくなる可能性もあります。そうなっても住宅ローンの返済は待ってはくれません。万が一に備え、手元にある程度の現金を残しておくことや、団信だけでなく疾病保障付団信に加入しておくといった備え方があります。

>>無理なく返済できる返済額は?

病気やケガのリスクは団信の保障範囲と上乗せ幅で比べる

住宅ローンを利用する年代で一番多いのは30代です。30代から最長35年間返済を続けるわけですから、その間に病気になることも考えられます。

糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病をもつ人の割合は40歳以降に男女ともに増加するため、病気に対するリスクも考えておくべきでしょう。

住宅ローンを借りるには団体信用生命保険(団信)への加入が原則必須で、団信は契約者が死亡したときや所定の高度障害状態になったとき(余命6ヶ月以内と判断された場合を含む商品もあります)に、残りの住宅ローン残高を保障してくれます。多くの住宅ローンでは、これに加えて疾病保障を用意しています。

がんのみを対象にしたもの、3大疾病・8大疾病を対象にしたもの、病気だけでなくケガまで対象にした全疾病保障まで内容はさまざまで、一般的には金利に0.100%〜0.300%程度を上乗せして付帯する仕組みが基本です。一方で、上乗せ金利なしで疾病保障を付けられる住宅ローンもあります。

たとえばSBI新生銀行では団信を3種類から選べ、一般団信と全疾病保障付団信は上乗せ金利なし、ガン団信は借入金利に年0.100%の上乗せです(2026年10月時点・公式サイトの団信の案内)。全疾病保障付団信は8疾病による就業不能は1回最大12回、それ以外の病気やケガは最初の3か月が免責期間といった支払条件があり、保障の範囲は金融機関ごとに異なります。

生命保険でこうした事態に備えることもできますが、住宅ローンに上乗せなしでついてくる保障で備えられるなら、保険料の負担を増やさずに済みます。上乗せ金利は返済期間全体の総支払額に乗り続けるため、保障の手厚さと上乗せ幅はセットで比較する必要があります。

>>無料の疾病保障付き住宅ローンの保障内容を比較!

離婚リスクは共有名義と名義変更で問題になりやすい

離婚は決して珍しいことではありません。夫婦共同名義で購入した場合、家は持分に応じて物理的に分けることはできないため、所有権をめぐって争いが起きてしまうこともあります。

一番単純な方法は、家を売却して売却代金から住宅ローンの残債を返済し、残りを等分する方法です。新築住宅でも入居した時点で中古として扱われるため、購入価格どおりに売れるとは限りません。売却時に住宅ローンの残債を残さないためには、頭金をある程度用意しておくことや、早い段階から繰上返済で残高を減らしておくことが対策の一つになります。

また、住宅ローンの契約者が夫で、名義を妻に変更したい場合は、変更前の夫名義の住宅ローンを完済しなければ名義変更はできません。妻に残りの住宅ローンを借り入れできる収入があれば名義変更は比較的簡単に行えますが、専業主婦やパート勤務では住宅ローンの借り入れが難しく、離婚に際して問題になりやすい点です。

転勤リスクは売るか貸すかで負担が変わる

会社員の場合、念願のマイホームを購入しても、転勤によって住み続けられなくなってしまうことがあります。その場合、思い切って売ってしまうケースと、賃貸物件として貸すケースが考えられます。

売却する場合、築年数が浅いうちは買い手が早く見つかるかもしれませんが、当然、売ってしまえば再び住むことはできません。売却して住宅ローンの残債を返済しても不足した場合には、返済が続くことになります。

貸す場合には家賃収入で住宅ローンの返済が可能ですし、転勤から戻ってきたときに再び住むこともできます。ただし、借り手がつかなければ家賃収入は得られず、家賃収入だけでは家の維持費や固定資産税の支払いまで賄えない、といったリスクもあります。

災害リスクは家が無くなってもローンが残る点にある

日本では、大きな地震が各地で繰り返し発生しています。地震や災害を考えると、家の購入をためらってしまう方もいます。

災害で家が全壊してしまった場合に考えなければならないのは、家が無くなっても住宅ローンは無くならないということです。家を建て直すために新たに住宅ローンを借り入れる、とりあえず賃貸に入居する、といった場合に二重の居住費を支払うのは大きな負担です。

住宅ローンを借り入れる際には火災保険の加入が必須ですが、加えて地震保険にも加入しておくことをおすすめします。火災保険では、地震・噴火・津波によって生じた火災による損害は免責となり保障されません。地震保険は、被災した際に生活を再建する助けとなるものです。

地震保険には金額の上限もあります。財務省の説明によれば、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で設定し、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度とされています。地震保険だけでは家を建て直す費用をまかなえないのは、地震保険の目的が完全な復旧ではなく被災者の生活の安定にあるからです。

そのため、住宅ローン残高・貯蓄・地震保険の3つを合わせて、被災しても生活を立て直せるかを試算しておくと、加入の要否を判断できます。ローン残債が少ない方や貯蓄が十分な方を除き、万一に備えて加入を検討しておくとよいでしょう。

>>地震保険の必要性

属性別に気をつけたいリスク

同じリスクでも、借り手の属性によって注意点は変わります。自営業、転職直後、夫婦二人で借りる場合は、とくに収入の変動と団信の保障範囲が問題になりやすくなります。

自営業・フリーランスは収入の振れ幅に備える

会社員に比べて収入が変動しやすいため、審査では複数年分の所得(確定申告の所得金額)で安定性を見られる傾向があります。返済比率に余裕をもたせ、収入が落ち込んだ年でも返済を続けられる資金計画にしておくことが、収入減少リスクへの最大の備えになります。

転職直後は借入額を抑えて収入の変動に備える

勤続年数が短いと審査で不利になりやすい一方、勤続年数を問わない金融機関もあります。転職直後は、勤務先の安定性や見込み年収の説明ができるよう準備し、無理のない借入額に抑えることが、その後の収入変動リスクを下げます。

ペアローン・収入合算は片方の収入だけになる事態に備える

二人の収入を前提に借入額を大きくすると、どちらかが働けなくなったときや離婚時に返済・名義の問題が一気に重くなります。それぞれの団信の保障範囲と、片方の収入だけになった場合の返済可否を、契約前に試算しておく必要があります。

住宅ローンのリスクまとめ

病気やケガ、離婚や転勤・転職、災害は、住宅ローンがなくても生活が大きく揺らぐ出来事です。そこに返済が重なるからこそ、借りる前の備えが必要になります。

こうした万が一のことが起きても、貯蓄があれば態勢を立て直すまでの時間を稼げます。返済と並行して貯蓄を続けるためには、表面金利の低さだけで決めず、諸費用・団信を含めた総支払額と、余裕をもって返済できる金額の物件かどうかを見極めたうえで購入を決めてください。

手数料・団信の条件は改定されることがあります。総額で比べる際は、各金融機関の最新の条件表を基にしてください。


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住宅ローン比較ネット 編集部

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