
住宅ローンで備えなければならないリスクには、どのようなものがあるのでしょうか。
どんなリスクがあるのかを把握したうえで住宅ローンを選んでおけば、いざというときにそのリスクに備えておくことができます。30年以上もの長期にわたって返済が続く住宅ローンですから、その間にはさまざまなことが起こり得ます。
変動金利で借りた場合には金利上昇リスクがありますし、返済期間中の病気やケガ、勤めていた会社の倒産といったことも考えられます。
今回はリスクごとに対応策を考えてみましょう。金利の数字だけで住宅ローンを選ぶのではなく、「想定外のことが起きても返し続けられるか」という視点が大切です。
目次
金利上昇リスク
全期間固定金利以外の住宅ローンでは、金利の上昇リスクを考えておく必要があります。
中でも、住宅ローンを借りる人の多くが利用する変動金利型の住宅ローンは、文字どおり金利が変動する代わりに低い金利で借り入れができる金利タイプです。変動金利型は金利が下がれば返済額は減りますが、上昇した場合には返済額が増えてしまいます。
長く「超低金利」が続いた背景には日銀の金融緩和がありましたが、状況は大きく変わりました。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを進めています。2026年6月16日には政策金利を1.0%程度へ引き上げることを決定し、これは約31年ぶりの高い水準です(2026年6月時点)。消費者物価指数(CPI)も日銀が目標とする2%を上回る状況が続いており、かつて「金利上昇のきっかけ」と言われたCPI2%の節目はすでに通過しています。いわば「金利のある時代」に入ったといえます。
変動金利型住宅ローンの基準金利は、主に銀行の短期プライムレート(短プラ)に連動します。利上げを受けて短プラを引き上げる銀行が相次いでおり(多くは2026年8月以降に適用)、変動金利の基準金利も今後の見直しで上昇する方向です。
ただし、変動金利には「5年ルール(5年間は毎月返済額を据え置く)」「125%ルール(見直し後の返済額は従来の125%まで)」を採用している銀行が多く、金利が上がってもすぐに毎月の返済額が跳ね上がるわけではありません。注意したいのは、毎月の返済額が変わらなくても、内訳のうち利息の割合が増え、元金が減りにくくなる点です。気づかないうちに残高の減りが遅れることがあるため、定期的に返済予定表を確認しておきましょう。
金利上昇への備えとしては、金利が上がる前に固定金利へ借り換える、繰上返済で元金を圧縮する、上昇分を吸収できる余裕資金を確保しておくといった対策が考えられます。最新の金利動向や各行の金利は、日本銀行や各金融機関の公式サイトでご確認ください。
収入減少・支出増大リスク
物価が上がっても賃金の上昇が追いつかない局面では、家計の余裕は目減りします。月々の返済額の負担が大きい住宅ローンを組んでしまうと、収入が減った場合に返済が困難になることも考えられます。
よく言われるのは、無理のない返済額の目安は手取り(または年収)に対して25%程度までということです。無理のない返済額で住宅ローンを組むことが、返済破綻のリスクを減らすことにつながります。低金利の時期には「借りられる額」をそのまま借りすぎてしまうケースもよく聞きますが、借りられる額と無理なく返せる額は別物だと意識しておきましょう。
また、数十年という返済期間では、子どもの成長に伴う教育費や、親の介護費用が必要になるかもしれません。病気やケガで働けなくなる可能性もあります。そうなっても住宅ローンの返済は待ってはくれません。万が一に備え、手元にある程度の現金を残しておくことや、団信だけでなく疾病保障付団信に加入しておくことが重要です。最近では、上乗せ金利なしの疾病保障付住宅ローンも増えています。
病気やケガのリスク
住宅ローンを利用する年代で一番多いのは30代です。30代から最長35年間返済を続けるわけですから、その間に病気になることも考えられます。
糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病をもつ人の割合は40歳以降に男女ともに増加するため、病気に対するリスクも考えておくべきでしょう。
住宅ローンを借りるには団体信用生命保険(団信)への加入が原則必須で、団信は契約者が死亡したときや所定の高度障害状態になったとき(余命6ヶ月以内と判断された場合を含む商品もあります)に、残りの住宅ローン残高を保障してくれます。多くの住宅ローンでは、これに加えて疾病保障を用意しています。
がんのみを対象にしたもの、3大疾病・8大疾病を対象にしたもの、病気だけでなくケガまで対象にした全疾病保障まで内容はさまざまで、一般的には金利に0.1〜0.3%程度を上乗せして付帯する仕組みが基本です。一方で、がん保障や全疾病保障を上乗せ金利なし(無料)で付帯できる住宅ローンも増えています(保障範囲や支払い条件は金融機関ごとに異なります)。
生命保険でこうした事態に備えることもできますが、住宅ローンに無料でついてくる保障で備えられるなら、それに越したことはありません。保障の手厚さは銀行選びの重要なポイントですので、金利だけでなく団信の内容もあわせて比較しましょう。
離婚リスク
今の時代、3組に1組の夫婦が離婚するとも言われます。夫婦共同名義で購入した場合、家は持分に応じて物理的に分けることはできないため、所有権をめぐって争いが起きてしまうこともあります。
一番単純な方法は、家を売却して売却代金から住宅ローンの残債を返済し、残りを等分する方法です。ただし一般的に、家は購入直後に売却しても2割ほど値下がりするといわれます。売却時に住宅ローンの残債を残さないためには、頭金を2割程度用意しておくことが対策の一つになります。
また、住宅ローンの契約者が夫で、名義を妻に変更したい場合は、変更前の夫名義の住宅ローンを完済しなければ名義変更はできません。妻に残りの住宅ローンを借り入れできる収入があれば名義変更は比較的簡単に行えますが、専業主婦やパート勤務では住宅ローンの借り入れが難しく、離婚に際して問題になりやすい点です。
転勤リスク
会社員の場合、念願のマイホームを購入しても、転勤によって住み続けられなくなってしまうことがあります。その場合、思い切って売ってしまうケースと、賃貸物件として貸すケースが考えられます。
売却する場合、築年数が浅いうちは買い手が早く見つかるかもしれませんが、当然、売ってしまえば再び住むことはできません。売却して住宅ローンの残債を返済しても不足した場合には、返済が続くことになります。
貸す場合には家賃収入で住宅ローンの返済が可能ですし、転勤から戻ってきたときに再び住むこともできます。ただし、借り手がつかなければ家賃収入は得られず、家賃収入だけでは家の維持費や固定資産税の支払いまで賄えない、といったリスクもあります。
災害リスク
日本では、大きな地震が各地で繰り返し発生しています。地震や災害を考えると、家の購入をためらってしまう方も少なからずいるのではないでしょうか。
災害で家が全壊してしまった場合に考えなければならないのは、家が無くなっても住宅ローンは無くならないということです。家を建て直すために新たに住宅ローンを借り入れる、とりあえず賃貸に入居する、といった場合に二重の居住費を支払うのは大きな負担です。
住宅ローンを借り入れる際には火災保険の加入が必須ですが、加えて地震保険にも加入しておくことをおすすめします。火災保険では、地震・噴火・津波によって生じた火災による損害は免責となり保障されません。地震保険は、被災した際に生活を再建する助けとなるものです。ローン残債が少ない方や貯蓄が十分な方を除き、万一に備えて加入を検討しておくとよいでしょう。
属性別に気をつけたいリスク(よくある質問)
同じリスクでも、借り手の属性によって注意点は変わります。代表的なケースを整理します。
Q. 自営業・フリーランスが気をつけることは?
会社員に比べて収入が変動しやすいため、審査では複数年分の所得(確定申告の所得金額)で安定性を見られる傾向があります。返済比率に余裕をもたせ、収入が落ち込んだ年でも返済を続けられる資金計画にしておくことが、収入減少リスクへの最大の備えになります。
Q. 転職直後でも借りられる?
勤続年数が短いと審査で不利になりやすい一方、勤続年数を問わない金融機関もあります。転職直後は、勤務先の安定性や見込み年収の説明ができるよう準備し、無理のない借入額に抑えることが、その後の収入変動リスクを下げます。
Q. ペアローン・収入合算で借りるときの注意は?
二人の収入を前提に借入額を大きくすると、どちらかが働けなくなったときや離婚時に返済・名義の問題が一気に重くなります。それぞれの団信の保障範囲と、片方の収入だけになった場合の返済可否を、契約前に必ず確認しておきましょう。
住宅ローンのリスクまとめ
住宅ローンのリスクを挙げてみましたが、いかがでしたか。病気やケガ、離婚や転勤・転職、災害など、住宅ローンを返済していなくても大変な状況になりそうなことばかりですが、さらに住宅ローンの返済を続けていかなければならないとなれば、やはり事前に備えておくことが必要です。
こうした万が一のことが起きても、貯蓄があれば態勢を立て直すまでの時間を稼げます。返済を行いつつ貯蓄も並行することが非常に大切です。そのためには、表面金利の低さだけで決めず、諸費用・団信を含めた総支払額と、余裕をもって返済できる金額の物件かどうかを見極めて購入することが重要ですね。
