目的別に住宅ローンの選び方を考えるイメージ

住宅ローンは「どこが一番いい」と一概には言えず、何を重視するか(目的)で“おすすめ”が変わります。この記事では、初期費用・金利の低さ・保障の手厚さ・全期間固定・借り換えという5つの目的別に、いまの事実にもとづく選び方を整理します。

金利や手数料、団信の条件は毎月のように改定されます。本記事の数値は2026年8月18日に各金融機関・住宅金融支援機構の公式サイトで確認した内容です。申込前には必ず各行公式で最新をご確認ください。

① 初期費用(事務手数料)を抑えたい

住宅ローンの初期費用で最も大きいのが融資事務手数料です。多くのネット銀行は「借入額×2.20%(税込)」の定率型で、借入額が大きいほど負担が増えます。借入3,000万円なら66万円(税込)、5,000万円なら110万円(税込)と、借入額に比例して膨らむ点が定率型の特徴です。

初期費用を抑えたいなら、定率型より割安になるケースを探すのがポイントです。たとえばフラット35では、楽天銀行が新規(購入・建築)で借入額×1.10%(税込・最低110,000円)、借り換えで借入額×0.99%(税込・最低165,000円)と低めに設定しています。

ただしここには落とし穴があります。楽天銀行のこの手数料は返済口座を楽天銀行に指定した場合の料率で、返済口座が楽天銀行以外だと借入額×1.43%(税込)に上がります。「手数料が安い銀行」として名前だけを覚えて申し込むと、想定と違う金額を請求されることになります。手数料は料率だけでなく適用条件までセットで確認してください。

もうひとつ、よくある誤解が「初期費用ならSBI新生銀行の定額手数料が安い」という説明です。これは現在では当てはまりません。SBI新生銀行の事務手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率型で、かつての定額型(5.5万〜16.5万円)は取扱を終了しています。なお同行では電子契約サービスを使う場合、印紙税は不要になる代わりに電子契約利用手数料5,500円(税込)がかかります。

そして最も大事なのは、事務手数料の安さと総支払額の安さは別物だという点です。手数料の差は借入時の一度きりですが、金利差は返済期間を通じて効き続けます。手数料が数十万円安くても、金利がわずかに高ければ長期では逆転することがあります。初期費用で選ぶときも、必ず「手数料+利息」の合計で比べてください

② 金利の低さで選びたい

当面の返済額を抑えたいなら、変動金利が低水準のネット銀行(ドコモの銀行(旧・住信SBIネット銀行)・auじぶん銀行・PayPay銀行・SBI新生銀行・ソニー銀行など)が候補になります。ただし変動金利は2026年に入って上昇局面にあり、選ぶ前に押さえておくべき論点が3つあります。

基準金利と適用金利は別物

変動金利のもとになるのは短期プライムレートです。三菱UFJ銀行とみずほ銀行は2026年6月16日に「短期プライムレートを8月3日に年2.125%から年2.375%へ引き上げる」と発表し、すでに改定済みです。三菱UFJ銀行はこの引き上げを受けて2026年9月1日から住宅ローン変動金利の基準金利を見直し、9月の基準金利は8月31日に発表すると公表しています(2026年8月18日時点で数値は未発表)。

ここで混同しやすいのが、基準金利が上がること=あなたの適用金利がその日から上がること、ではない点です。適用金利は「基準金利−引下げ幅」で決まります。実際、2026年8月時点では大手行の変動型の適用金利は据え置かれています。「変動金利が一斉に上がった」という単純な理解では、判断を誤ります。

返済額に反映される時期は銀行と契約タイプで違う

すでに借りている人にとって重要なのは、金利改定がいつの返済分から反映されるかです。三菱UFJ銀行の場合、毎月1日時点の短期プライムレートを基準に見直すタイプと、毎年4月1日・10月1日を基準に見直すタイプがあり、どちらに該当するかは「ご返済のお知らせ」で確認できると案内されています。自分の契約がどちらかを、返済予定表と各行公式で必ず確認してください。

5年ルール・125%ルールが無い銀行がある

変動金利には、金利が上がっても5年間は毎月返済額を据え置き、6年目の増額も1.25倍までに抑える「5年ルール」「125%ルール」があります。ただしこれはすべての銀行にあるわけではなく、SBI新生銀行・ソニー銀行・PayPay銀行などは採用していません。ルールが無い銀行は金利上昇がすぐ返済額に反映されるため、家計の耐性を踏まえて選ぶ必要があります。

また、みずほ銀行は同ルールの説明に「元金均等返済の場合は対象外です」と明記しています。返済方法によっても扱いが変わる点に注意してください。適用金利そのものは日々動くため、具体的な数値は各行公式の金利一覧で最新をご確認ください

③ 保障(団信)の手厚さで選びたい

万一に備えるなら、上乗せ金利0円で保障が広い団信が付く銀行が有力です。ただし団信は「上乗せ0円かどうか」だけで比べると実態を見誤ります。加入できる年齢と、ペアローンで組むかどうかで条件が変わるからです。

SBI新生銀行は、一般団信・全疾病保障付団信・ガン団信の3つから1つを選ぶ方式です。全疾病保障付団信は上乗せ金利なしで、がん・急性心筋梗塞・脳卒中・高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎の8疾病を含む病気やケガで所定の就業不能状態が続いた場合に残高を保障し、就業不能期間中の毎月の返済額も保障します。ガン団信を選ぶ場合は年0.100%の上乗せです。ただし全疾病保障付団信とガン団信の加入年齢は20〜49歳で、一般団信(20〜65歳)より狭い点は押さえておきましょう。

auじぶん銀行は、50歳以下で単独加入の場合、がん50%保障団信を上乗せ金利なしで付帯できます(がん診断で残高の50%を保障、急性心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・腎疾患の4疾病保障と全疾病長期入院保障も付帯)。がん100%保障団信は年0.050%、がん100%保障団信プレミアムは年0.150%、ワイド団信は年0.300%の上乗せです。注意したいのはペアローンで、ペアローン連生団信にすると同じがん50%保障団信でも年0.300%の上乗せになります。夫婦で組む前提の人は「上乗せ0円」の前提が変わることを知っておいてください。

このように、団信の条件は「年齢」「単独かペアローンか」で変わります。がん団信の上乗せ金利も各行・時期で異なるため、「0円」と決めつけず、自分の年齢と借り方で適用される条件を公式で確認してください。

④ 返済額を最後まで固定したい(全期間固定)

金利上昇が不安で返済額を確定させたいなら、フラット35などの全期間固定が選択肢です。住宅金融支援機構によると、2026年8月資金受取分(新機構団信付き)の借入金利は、返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下で最も多い金利が年3.290%、融資率9割超で年3.400%です。返済期間20年以下(フラット20)は9割以下で年2.970%、フラット50は9割以下で年3.500%となっています。

2026年8月のフラット35の借入金利を返済期間と融資率別に比較した棒グラフ
返済期間が長いほど、また融資率が9割を超えるほど金利は高くなります(2026年8月資金受取分)。

全期間固定を検討するなら、いま長期金利が動いていることも知っておくとよいでしょう。2026年8月17日の東京債券市場では、長期金利(新発10年物国債利回り)が一時年2.930%と約30年ぶりの高い水準をつけました長期金利は固定金利・フラット35の基準になる指標で、変動金利の基準である短期プライムレートとは別物です。「金利が上がった」という報道を見たときは、どの金利の話なのかを分けて読むことが判断を誤らないコツです。

ただし、これを「今のうちに固定へ」と急ぐ理由にすべきではありません。固定と変動のどちらが向くかは、返済期間の長さ・家計が金利上昇にどこまで耐えられるか・繰上返済の予定によって変わります。フラット35は自営業や転職直後でも申し込みやすく、返済額が最後まで動かない安心を金利で買う商品だと理解して選ぶのが適切です。なお9月の適用金利は9月1日ごろの発表予定で、2026年8月18日時点では未発表です。

⑤ 借り換えで総返済額を減らしたい

借り換えは、「いまのローンより金利が下がるか」だけでなく、事務手数料・保証料・抵当権の設定と抹消にかかる費用などを含めた総額で判断します。金利が0.300%下がっても、諸費用が数十万円かかれば回収に何年もかかることがあるためです。

コストを抑えるうえで見るべきは「借入時にかかる費用」と「返済中にかかる費用」の両方です。たとえばSBI新生銀行は保証料と一部繰上返済手数料が0円で、借り換え後に繰上返済を重ねたい人はコストを抑えやすくなります。フラット35への借り換えなら、前述のとおり楽天銀行は借入額×0.99%(税込・最低165,000円/返済口座を楽天銀行に指定した場合)と手数料率が低めです。

判断の順番としては、残債・残期間・現在の金利を確認したうえで、諸費用込みで本当に得かをシミュレーションするのが確実です。残期間が短い、または残債が少ない場合は、金利差があっても諸費用を回収できないことがあります。

目的別のまとめ

重視すること選び方のポイント見落としやすい点
初期費用を抑える事務手数料のタイプを比較(定率2.20%(税込)か、フラット35で楽天銀行の1.10%(税込)などか)料率の適用条件(楽天銀行は返済口座が他行だと1.43%(税込))。SBI新生銀行は定率2.20%(税込)のみ
金利の低さネット銀行の変動金利(適用金利は各行公式で確認)基準金利と適用金利は別。5年・125%ルールの有無、反映される返済月
保障の手厚さ上乗せ0円の団信(SBI新生銀行の全疾病保障付団信、auじぶん銀行のがん50%保障団信)加入年齢の上限(SBI新生銀行の全疾病は20〜49歳)。ペアローン連生は上乗せが付く場合がある
返済額を固定フラット35など全期間固定(2026年8月・21年以上35年以下・9割以下で年3.290%)融資率と返済期間で金利が変わる。翌月分は月初に発表
借り換え諸費用込みの総額で判断。保証料・繰上返済手数料0円の銀行が有利残期間が短いと諸費用を回収できないことがある

目的が2つ以上あるときの考え方

実際には「初期費用も抑えたいし、保障も手厚くしたい」というように、目的が複数あるのが普通です。そのときは目的に優先順位を付けたうえで、金額に換算して比べると判断しやすくなります。

考え方はシンプルで、一度きりの費用(事務手数料・登記費用など)と、返済期間を通じてかかる費用(利息・団信の上乗せ分)を分けて足し上げるだけです。事務手数料の差は借入時に確定しますが、金利や団信の上乗せ0.100%は返済期間の長さに比例して効きます。借入額が大きく返済期間が長いほど、初期費用より金利・上乗せ側の重みが増すという関係になります。

この整理をしておくと、「手数料が安い銀行」と「金利が低い銀行」が違ったときに、どちらを取るべきかを感覚ではなく金額で決められます。優先順位を先に決めてから比較する——これが目的別に選ぶときの実務的なコツです。

よくある質問

Q. 初期費用ならSBI新生銀行の定額手数料が安いと聞きました。
A. それは古い情報です。SBI新生銀行の事務手数料は現在、借入金額×2.20%(税込)の定率型のみで、定額型は取扱を終了しています。初期費用は各行の手数料タイプと適用条件を最新情報で比較してください。

Q. 目的別に選んだあと、途中で状況が変わったらどうなりますか。
A. 金利タイプは契約後でも変更できる場合があります(SBI新生銀行では変動金利・当初固定金利の利用者が金利変更時に当初固定金利を選ぶことができ、その際は手数料5,500円(税込)がかかります)。一方で団信の種類は契約時に1つを選ぶ方式で、あとから変えられないのが一般的です。変えにくい条件から先に決めるのが安全です。

Q. 手数料の安い銀行と金利の低い銀行、どちらを選べばよいですか。
A. 借入額と返済期間で答えが変わります。手数料の差は借入時の一度きり、金利差は返済期間ずっと効き続けるため、借入額が大きく期間が長いほど金利側の重みが増します。前章の考え方で、両方を金額に換算してから比べてください。

Q. 結局どこが一番おすすめですか。
A. 目的によって変わります。初期費用・金利・保障・固定・借り換えのどれを優先するかを決め、各行公式で最新の手数料・金利・団信を確認して選ぶのが失敗しないコツです。

まとめ

住宅ローンの“おすすめ”は目的しだいです。初期費用なら手数料タイプと適用条件、金利ならネット銀行(適用金利は公式で確認)、保障なら上乗せ0円の団信と加入年齢、安心なら全期間固定、借り換えなら諸費用込みの総額——という軸で選びましょう。

そのうえで、どの目的で選ぶ場合も「一度きりの費用」と「返済期間を通じてかかる費用」を分けて金額で比べることをおすすめします。手数料・金利・団信の条件は改定されるため、必ず各金融機関の公式サイトで最新をご確認ください。

住宅ローン比較ネット 編集部

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