金利上昇局面の住宅ローンをイメージした図

2016年1月、日銀はマイナス金利政策の導入を決定し、翌2月から実施しました。約8年にわたり続いたこの政策は2024年3月に解除され、その後は段階的な利上げが進んでいます。2026年6月16日の金融政策決定会合では政策金利が年1.0%程度まで引き上げられ、1995年以来およそ31年ぶりの水準となりました(2026年7月31日の会合では同水準で据え置き)。この記事では、マイナス金利政策の経緯と狙い、解除後の利上げの流れ、そして住宅ローンの「金利」と「総支払額」にどう効いてくるのかを整理します。

マイナス金利政策とは

日銀と当座預金取引のある銀行には、「準備預金」として一定割合の現金を日銀の当座預金口座に預けることが法律で義務付けられています。しかし、長引く景気低迷と資金需要の低迷で、法律で義務付けられた割合以上に「準備預金」が預けられていました(超過準備預金)。超過準備預金には年0.1%の利息が付くため、貸し倒れリスクのある融資を行うより、簡単に利益を上げられる状態が生じていたのです。

2016年1月に決定したマイナス金利政策で、日銀は当座預金に預けられる銀行の資金に3段階の金利を設定しました。

  1. すでに預けられている超過準備預金には0.1%の金利が付く
  2. これから預けられる当座預金のうち、法律で定められた所要準備額については金利を0%とする
  3. 新たな超過準備預金は金利をマイナス0.1%とする

日銀にお金を預けるだけで利益を得ていた銀行は、その利益を得られなくなる(逆にコストになる)ため、資金を企業や個人への融資に回し、経済が活性化する——というのが狙いでした。

日本銀行のマイナス金利政策

マイナス金利政策導入の背景

バブル崩壊以後、「失われた30年」とされる経済の低迷にともない、金利も低下傾向にありました。この間も日銀は金融緩和を続けてきましたが、結果的に経済を上向かせるには至りませんでした。具体的には次のような流れです。

  • 1999年から2000年にかけて「ゼロ金利政策」を導入
  • 2001年から2006年には「量的金融緩和」を実施
  • 2010年には無担保コール翌日物を0%とし、ETFやREITの購入に踏み切る「包括的金融緩和政策」を導入
  • 2013年は第2次安倍政権発足に伴う「量的・質的金融緩和」を導入

マイナス金利政策の狙い

過去30年、いくら金融緩和を実施しても、金利をゼロにしても市中にお金が回らず経済が活性化しないため、滞留している資金(日銀に預けられている預金)から実質的に“罰金”を取る、というのがマイナス金利の考え方です。借り手に有利で貸し手に不利となる側面もありますが、日銀としてはそれ以上に日本経済全体を活性化させることを狙っていました。なお、マイナス金利で金融機関の収益が低下したため、2016年9月にはこれを補う「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)」も導入されています。

マイナス金利政策は2024年3月に解除された

長く「出口が見えない」とされてきたマイナス金利政策ですが、賃金と物価の好循環が見通せるようになったことを背景に、日銀は2024年3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定しました(同時に長短金利操作=YCCも終了)。短期金利の誘導目標は、マイナスからゼロ近傍(0〜0.1%程度)へと引き上げられました。

その後も日銀は段階的に利上げを進めています。

日銀の政策金利がマイナス0.1%から2026年6月に1.0%まで引き上げられた推移を示す折れ線グラフ
2024年3月の解除以降、段階的に利上げが進んだ。2024年3月の誘導目標は0〜0.1%程度(グラフは上限の0.1%で表示)。2026年7月31日の会合では1.0%程度で据え置き。
  • 2024年7月:0.25%程度へ
  • 2025年1月:0.5%程度へ
  • 2025年12月:0.75%程度へ
  • 2026年6月16日:1.0%程度へ(1995年以来およそ31年ぶりの水準)

直近の2026年7月31日の金融政策決定会合では、政策金利は1.0%程度で据え置きとなりました。日銀は経済・物価情勢に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を示しており、「利上げは終わった」と考えるのは早い局面です。ただし次の利上げの時期や幅は決まっているわけではありません。最新の決定内容は、日本銀行の公表文(金融市場調節方針)でご確認ください。

住宅ローンへの影響

マイナス金利政策の導入により、2016年春から夏にかけて住宅ローン金利は固定金利を中心に大きく低下し、歴史的な借り換えブームも起きました。長く続いた超低金利は、住宅ローン利用者にとって大きな追い風でした。しかし2024年の政策転換以降は流れが変わっています。ここからは、変動金利と固定金利で「効き方」がどう違うのかを分けて見ていきます。

変動金利:政策金利に連動するが、反映のタイミングは銀行ごとに違う

変動金利は、短期金利(政策金利や各行の短期プライムレート)の影響を受けます。政策金利が上がれば、各行が公表する基準金利(店頭金利)も引き上げられやすくなります。ただし、ここで押さえておきたい点が3つあります。

  • 基準金利と適用金利は別物です。実際に返済に使われるのは「基準金利−引下げ幅」で決まる適用金利で、引下げ幅は契約時に決まっているのが一般的です。
  • 改定・適用のタイミングは銀行ごとに異なります。多くの銀行は年2回(4月・10月の適用)ですが、見直し時期も反映幅も一律ではありません。
  • すべての銀行が同時に上がるわけではありません。政策金利が動いた月にすぐ引き上げる銀行もあれば、据え置く銀行もあります。「利上げ=全行がその月に上がる」と読み替えないことが大切です。

また、返済額の急増をやわらげる5年ルール(金利が変わっても5年間は毎月返済額を据え置く)・125%ルール(見直し後の返済額を直前の125%までに抑える)を採用していない銀行もあります。これらのルールがない場合、金利が上がるとその都度、毎月の返済額そのものが変わります。金利の低さだけでなく、この2つのルールの有無まで確認してから選ぶのが、上昇局面での基本です。適用の有無は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

固定金利:長期金利に連動し、すでに上昇局面にある

固定金利は長期金利(10年国債利回り)の影響を受けます。その長期金利は上昇基調にあり、2026年8月上旬時点で2%台後半で推移しています(最新値は財務省「国債金利情報」でご確認ください)。全期間固定の代表格である【フラット35】も、2026年8月の借入金利(新機構団信付き・借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下)で最も多い金利は年3.290%となり、前月の年3.140%から上昇しました。

変動と固定を比べるときは、「今の金利差」ではなく「金利が動いたときにどちらが困るか」で考えると判断しやすくなります。変動は当初の負担が軽い代わりに上振れリスクを自分で背負い、固定は当初の負担が重い代わりに完済まで返済額が確定します。フラット35の金利は取扱金融機関ごとに異なるため、実際の適用金利は申込先の公式情報で確認してください。

金利上昇局面こそ「総支払額」で比べる

利上げが話題になると、どうしても表面の金利ばかりに目が向きます。しかし実際に支払う総額は、金利だけでは決まりません。事務手数料・保証料・団信の上乗せ金利を含めて初めて、どちらが有利かが見えてきます。たとえば事務手数料が「借入額×2.20%(税込)」の定率型と、数万円の定額型では、借入3,000万円なら60万円以上の差になります。金利差0.05%を追いかけるより、諸費用の差のほうが大きいことは珍しくありません。

次の観点を、金利と同じ重さで確認しておきましょう。

比較の観点見るポイント備考
事務手数料定率型(借入額×一定率)か定額型か定率型は借入額が大きいほど負担が増える。税込表示かも確認
保証料0円か、外枠(一括前払い)・内枠(金利上乗せ)か保証料0円でも事務手数料が高い場合があり、合計で比べる
団信・疾病保障一般団信は上乗せ0円か、がん・全疾病保障は上乗せ何%か上乗せ0.1〜0.3%は、実質的な金利差として効いてくる
繰上返済手数料一部繰上返済が無料か、最低金額の条件があるか金利上昇局面では、繰上返済のしやすさが利息の抑制に直結する
返済額の見直しルール5年ルール・125%ルールの有無変動金利を選ぶ場合の必須確認項目(無い銀行もある)

金利が上がる局面では、繰上返済のしやすさの価値も上がります。手数料無料でいつでも繰り上げできる銀行なら、ボーナスや余剰資金が出たときに元金を減らし、上昇分の利息を抑えられるからです。

よくある質問

Q. 日銀が利上げしたら、変動金利は翌月から上がりますか?

A. 必ずしもそうではありません。各行は自行の基準金利をどう見直すかを個別に判断しており、見直しの時期も反映幅も銀行ごとに異なります。加えて、返済額に反映されるのは多くの銀行で年2回の見直しタイミング(4月・10月適用が一般的)です。ご自身の契約の見直し時期は、借入先の約定条件で確認してください。

Q. すでに借りている変動金利は、契約時の引下げ幅も見直されますか?

A. 一般的に、契約時に決まった引下げ幅は完済まで変わりません(商品によって扱いが異なる場合があります)。したがって、上がるのは基準金利の変動分です。ただし借り換えをすると、その時点の引下げ幅が新たに適用されます。

Q. これから借りるなら、固定にしておくべきでしょうか?

A. 一律の正解はありません。判断材料になるのは、①金利が上がったときに家計が耐えられるか(返済負担率に余裕があるか)②繰上返済に回せる資金があるか③完済までの期間が長いか——の3点です。返済期間が長く、上振れを避けたい方ほど固定の価値が大きくなります。逆に、期間が短く繰上返済の余力がある方は変動が向く場合もあります。

Q. 自営業や転職直後でも、上昇局面で不利になりますか?

A. 金利そのものが属性によって上乗せされるわけではありませんが、審査では収入の安定性が見られます。自営業の方は確定申告書の直近数年分、転職直後の方は勤続年数の考え方が金融機関ごとに異なります。金利上昇局面では審査可能額が保守的に出ることもあるため、借入可能額の上限いっぱいで組まないことが結果的にリスク管理になります。必要書類や条件は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

まとめ

マイナス金利政策は2024年3月に解除され、2026年6月には政策金利が1.0%程度と31年ぶりの水準まで引き上げられました(同年7月末は据え置き)。住宅ローンは変動・固定とも「金利が上がりうる局面」を前提に選ぶ時代に入っています。比べるべきは表面金利だけでなく、事務手数料・保証料・団信を含めた総支払額と、返済額の見直しルールです。

対面相談とオンライン手続きの両方に対応するSBI新生銀行は、保証料0円・一部繰上返済手数料0円(1円から何度でも)・上乗せ0円の全疾病保障付団信などを備え、諸費用の分かりやすさという点で、金利の上昇局面でも検討に値する選択肢の一つです。適用金利や条件は変わるため、最新情報は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

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