2016年6月13日に三菱UFJ銀行が財務省に対して国債入札の「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」の返上を届け出を行ったことをうけ、同月15日に届け出を認め資格を取り消すと発表しました。
「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」とは、発行当局と意見交換する場に参加できるなどの特典がある一方、発行予定額の4%以上の応札を義務づけられるものです。
三菱UFJ銀行は特別資格を失いましたが、内田和人常務は2016年6月13日、「グループ証券会社に(国債入札)機能を集約して合理化を進める」と説明し、銀行が特別資格を返上したとしても、グループの証券会社を経由して必要な国債は調達が可能で、しかも、発行当局と意見交換する場に参加できるなどの資格保持者の特典については、そのグループの証券会社が保持しているので、返上しても三菱UFJ銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループに影響はない」としています。
三菱UFJ銀行の返上で「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」はメガバンク2行と証券会社19社の計21社(2016年6月15日現在)となりました。
なお、その後2021年5月16日付けでUBS証券も返上しており、2021年7月1日時点の参加者は20社となっています。
引用;財務省
三菱UFJ銀行の返上の背景
2016年に導入されたマイナス金利政策ですが、この返上はこの政策に対する「異議申し立て」であるとうがった見方もありますが、実際はマイナス金利政策により国債を保有することで損失が出る可能性があるのに、グループで重複して入札特別参加者になっていてコストが発生しており割に合わないという判断があったと考えるのが妥当ではないかと筆者は考えます。
日本最大の銀行である三菱UFJ銀行といえども、「お上にたてつく」のは現実的ではないですし、そのメリットも想像するのも難かしいのではないでしょうか。
三菱UFJ銀行は店舗の統廃合、三井住友銀行とグループを超えたATM共同運営などコスト削減にまい進しており、当時話題となったこの返上も合理的な判断のもとに実施されたと考えます。
長期金利への影響は?
三菱UFJ銀行が国債市場特別参加者を返上したといっても、国債を保有しないと言っているわけではありません。返上から5年経過していますが、長期金利は日銀の金融政策に影響されるだけといってよい状況で、三菱UFJ銀行の国債市場特別参加者の返上の影響は出ていないですし、今後も出ることはないと思われます。