このサイトを始めた2016年から、震度6を超える大きな地震が何度も起きています。
2016年の熊本地震、2018年の大阪府北部地震や北海道胆振東部地震、そして2024年1月の能登半島地震は特に被害が大きく、多くの方が住宅に被害を受けて仮設住宅への移住を余儀なくされたり、自宅を修理して住み続けるなどの不便を強いられました。熊本地震では「全壊」と判定された家だけでも8,000棟を超え、「半壊」「一部損壊」を合わせると20万棟以上の住宅が被害を受けています。 こうした地震による被害に備えるのが地震保険です。住宅ローンを借りる際は原則として火災保険への加入が必要ですが、地震保険は任意加入のため、加入しないままの方も少なくありません。
しかし
火災保険だけでは、地震を原因とする火災・倒壊や、津波による流失などの損害は補償されません 。地震による被害に備えるには、火災保険とセットで地震保険に加入する必要があります(地震保険を単独で契約することはできません)。 では、地震保険ではどの程度の保険金が支払われるのでしょうか。今回は損害の認定区分と支払われる金額の仕組み、そして
保険料を左右する割引制度 までを、住まいの総コストの視点で解説します。
損害の程度に応じて4つに区分される(2017年1月以降の契約) 現在の地震保険では、損害の程度が「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分で認定され、区分に応じた保険金が支払われます。実際にかかった修理費用の額ではなく、
認定された区分に応じて契約金額の100%・60%・30%・5%が定額で支払われる 仕組みです。 ※2016年12月31日以前に保険期間が始まった契約には、改定前の「全損」「半損」「一部損」の3区分が適用されます。ご自身の契約がどちらかは保険証券や保険会社でご確認ください。
損害区分 建物の損害の目安 家財の損害の目安 支払われる保険金 全損 主要構造部の損害が時価の50%以上、または焼失・流失した床面積が延床面積の70%以上 損害額が家財の時価の80%以上 契約金額の100% (時価が限度)大半損 時価の40%以上50%未満、または延床面積の50%以上70%未満 時価の60%以上80%未満 契約金額の60%(時価の60%が限度) 小半損 時価の20%以上40%未満、または延床面積の20%以上50%未満 時価の30%以上60%未満 契約金額の30%(時価の30%が限度) 一部損 時価の3%以上20%未満、または床上浸水(地盤面から45cmを超える浸水)を受けた場合 時価の10%以上30%未満 契約金額の5%(時価の5%が限度)
損害区分に応じて契約金額の100%・60%・30%・5%が定額で支払われる(時価が限度) なぜこのような定額方式なのかというと、大規模地震では膨大な件数の損害調査を短期間で行い、被災者の生活再建資金をできるだけ早く届ける必要があるからです。区分ごとの定額払いにすることで、調査から支払いまでの時間を大幅に短縮できます。 なお財務省は、地震保険について
「あくまで保険契約に基づき、保険会社による損害の査定の結果により保険金を支払うものであり、一律で見舞金のようなものを支払うことはない」 と明記しています。実際にどの区分に認定されるかは調査の結果次第であり、ここで挙げた基準は制度上の目安です。個別の契約でどこまで補償されるかは、必ずご自身の保険証券と保険会社・代理店でご確認ください。
地震に乗じた詐欺や不審な勧誘にも注意が必要です 。
保険金額の上限 地震保険の契約金額は、
火災保険(主契約)の保険金額の30%〜50%の範囲 で設定します。さらに建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。
つまり全損と認定されても、受け取れるのは最大で火災保険金額の半分まで。地震保険は「建て直し費用の全額をまかなう保険」ではなく、
被災後の生活を再建するための足がかりを確保する保険 と理解しておくのが正確です。
保険金が支払われない主な例 財務省が挙げている「保険金を支払えない主な場合」は次のとおりです。
故意もしくは重大な過失または法令違反による損害 地震などの発生日の翌日から起算して10日を経過した後に生じた損害 戦争、内乱などによる損害 地震等の際の紛失・盗難の場合 このほか、損害の程度が一部損に至らない場合や、門・塀・垣のみに生じた損害も対象外とされています。また、地震保険の対象は住居として使用される建物と家財に限られます。工場や事務所専用の建物のほか、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨・有価証券・預貯金証書・印紙・切手・自動車なども補償の対象外です。
保険料は「住まいの総コスト」で効いてくる|割引制度と長期契約 地震保険の保険料は建物の構造と所在地によって決まり、
どの損害保険会社で契約しても同一 です。裏を返せば、保険料を下げられる余地は「割引制度」と「契約期間の取り方」の2つに絞られます。住宅ローンの金利や事務手数料と同じく、ここも住まいの総コストの一部です。
4種類の割引制度(重複適用は不可) 建築年または耐震性能に応じて、居住用建物とその建物に収容される家財に10%〜50%の割引が適用されます。
複数の条件に当てはまっても重複して使うことはできません (最も有利な1つを選ぶことになります)。
免震建築物と耐震等級3は50%引き。4種類は重複して使えないため、最も割引率の高いものを選ぶ 割引制度 対象となる住宅 割引率 免震建築物割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく「免震建築物」 50% 耐震等級割引(等級3) 耐震等級3(構造躯体の倒壊等防止) 50% 耐震等級割引(等級2) 耐震等級2 30% 耐震等級割引(等級1) 耐震等級1 10% 耐震診断割引 耐震診断・耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)の耐震基準を満たす住宅 10% 建築年割引 昭和56年6月1日以降に新築された建物 10%
新耐震基準以降に建てられた住宅なら、少なくとも建築年割引の10%は使える可能性があります。
割引の適用には証明書類(登記事項証明書、性能評価書、耐震基準適合証明書など)が必要 なので、住宅の引き渡し時に受け取る書類は捨てずに保管しておきましょう。適用の可否は各損害保険会社の相談窓口または代理店にご確認ください。
長期契約なら1年あたりの保険料が下がる 地震保険の保険期間は短期(1年)と長期(2〜5年)があり、長期契約の保険料は下表の「長期係数」を掛けて算出します。5年契約なら1年契約5回分(5.00)ではなく4.70で済むため、
実質的に約6%の割引 になる計算です。まとまった資金が必要になる住宅購入直後は負担に感じるかもしれませんが、火災保険とあわせて長期でまとめておくと、更新の手間と総額の両方が軽くなります。
契約期間 長期係数 1年契約と比べた実質的な負担 2年 1.90 2年分(2.00)より約5%軽い 3年 2.85 3年分(3.00)より5%軽い 4年 3.75 4年分(4.00)より約6%軽い 5年 4.70 5年分(5.00)より6%軽い
なお現行の基本料率は、2022年(令和4年)10月1日以降に保険期間が始まる契約に適用されるものです。料率は改定されることがあるため、実際の保険料は各損害保険会社にご確認ください。
あわせて知っておきたい2つのポイント 1回の地震あたりの総支払限度額がある 地震保険は、政府と民間の損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険です。財務省によると、1回の地震等により
政府が支払うべき再保険金の総額は11兆5,553億円 で、民間保険責任額と合計した
1回の地震等による保険金の総支払限度額は12兆円 とされています(2026年8月時点・財務省公表)。この金額は関東大震災クラスの巨大地震が発生した場合でも対応可能な範囲として決定されており、阪神・淡路大震災や東日本大震災の際も保険金は総支払限度額の範囲内で円滑に支払われています。
保険料はどの保険会社でも同じ・地震保険料控除も使える 前述のとおり保険料は会社によって変わりません。また、支払った保険料は地震保険料控除の対象となり、
所得税で最高5万円・住民税で最高2万5千円 まで所得から控除できます。年末調整または確定申告で申告できるので、保険会社から届く控除証明書は必ず保管してください。
地震保険で足りない部分を補う公的支援も知っておく 地震保険は生活再建の「足がかり」であり、建て直し費用の全額をまかなうものではありません。そのため、住宅に大きな被害を受けたときは公的支援とあわせて考える必要があります。内閣府が案内している恒久的な制度の代表的なものは次の3つです。
制度 内容 金額の目安 被災者生活再建支援制度 住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯への支援金。基礎支援金(被害の程度)+加算支援金(再建の方法)の合計 基礎=全壊等100万円/大規模半壊50万円、加算=建設・購入200万円/補修100万円/賃借50万円。合計で最大300万円 住宅の応急修理(災害救助法) 住宅が半壊し自ら修理する資力のない世帯に対し、日常生活に必要な最小限度の部分を市町村が業者に委託して応急的に修理 1世帯あたり57.4万円(平成29年度基準) 災害復興住宅融資(住宅金融支援機構) 災害により滅失・損傷した家屋の復旧に対する低利の融資 住宅を建設する場合の基本融資額1,650万円 等
注意点として、被災者生活再建支援制度は
単身世帯の場合は金額がそれぞれ4分の3 になります。また支給には「り災証明書」が必要で、金額・対象・申請期限は災害ごとの運用や自治体独自の制度によって変わります。実際に利用する際は、必ず
内閣府 防災情報のページ とお住まいの都道府県・市区町村の公式情報でご確認ください。
よくある質問(FAQ) Q. 地震保険だけ単独で加入できますか? A. できません。地震保険は火災保険とセットで契約する保険です。すでに火災保険に加入している場合は、原則として保険期間の途中からでも地震保険を付帯できます(取扱いは契約中の保険会社にご確認ください)。
Q. 地震が原因の火災は火災保険で補償されますか? A. 補償されません。地震を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害は火災保険の補償対象外で、地震保険でのみ備えることができます。
Q. 割引制度は自動で適用されますか? A. 自動では適用されません。
建築年や耐震性能を証明する書類を提出してはじめて適用 されます。中古住宅を購入した場合は前の所有者から書類を引き継げているか確認しましょう。また4種類の割引は重複できないため、複数に該当する場合は割引率の高いものを選ぶことになります。
Q. 新築や住宅ローン返済中でも入るべきですか? A. 保険金は時価ベースで、使用による消耗分・経年劣化分が差し引かれます。それでも、住宅ローンの残債が多い時期に被災すると「住めなくなった家のローン返済」と「新しい住まいの費用」が二重にのしかかります。
残債が多い人ほど、地震保険の必要性は高い といえます。なお新築の耐震等級が高い住宅であれば割引率も大きくなるため、保険料負担は思ったほど重くならないケースもあります。
まとめ:保険料も含めた「住まいの総コスト」で考える 地震保険の保険金は、全損・大半損・小半損・一部損の4区分に応じた定額払いで、上限は火災保険金額の30〜50%(建物5,000万円・家財1,000万円)です。保険料はどの会社でも同額なので、下げられるのは
割引制度(10〜50%)と長期契約(最大6%相当) の2つ。加えて地震保険料控除と公的支援まで含めて、はじめて「いくら備えられているか」が見えてきます。
マイホームの資金計画では、物件価格や金利だけでなく、火災保険・地震保険の保険料まで含めた総コストで考えることが大切です。ローン側のコストを抑える選択肢としては、保証料0円・一部繰上返済手数料0円で諸費用の内訳が分かりやすいSBI新生銀行のような銀行を候補に入れるのも一つの方法です。最新の金利・条件は各社公式サイトでご確認ください。
住宅ローン比較ネット 編集部
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