「住宅ローンを複数の銀行に申し込むと、審査で不利になるらしい」——そう聞いて、1行ずつ順番に申し込もうとしていませんか。結論から言うと、住宅ローンの事前審査(仮審査)を複数の銀行に申し込むこと自体は、審査上のマイナスにはなりません 。ただし、「何行でも安心」という話でもありません。信用情報の仕組みと、事前審査・本審査という段階の違いを知っておくと、無駄なくリスクなく比較できます。
なぜ住宅ローンは「複数申込」でも不利になりにくいのか カードローンなどの無担保ローンは、短期間に何件も申し込みがあると「資金繰りに困っているのでは」と見られ、貸し倒れリスクが高いと判断されやすくなります。 一方、住宅ローンは事情が違います。
資金の使いみちが「その物件の購入」に限定されている こと、
購入する住宅に抵当権を設定する担保付きの融資 であること、そして
同じ物件で複数の銀行から二重に借りることは通常ありえない ことから、申込件数がそのまま貸し倒れリスクに直結しません。銀行にとって住宅ローンは長期の優良な取引であり、「他行にも申し込んでいる」という一点だけで落とすのは、むしろ機会損失になります。 実際、不動産会社やハウスメーカー経由で申し込む場合、担当者が提携する複数の金融機関へまとめて事前審査を出すのはごく一般的な進め方です。
それでも「申し込みすぎ」が効いてくる理由 ─ 信用情報は6か月残る 住宅ローンを申し込むと、銀行は必ず信用情報機関に照会します。ここで押さえておきたいのが、
何が、どれだけの期間、他行から見えるのか という点です。 指定信用情報機関のCIC(株式会社シー・アイ・シー)は、保有する情報と保有期間を公式に公表しています。
情報の種類 主な内容 保有期間 申込情報 いつ・どこに・どんな契約で申し込んだか(審査の合否は含まれない ) 照会日より6か月間 クレジット情報 契約内容・支払状況・残債額(延滞などの記録もここ) 契約期間中および契約終了後5年以内 利用記録 加盟会社が信用情報を照会した事実 利用日より6か月間
出典:CIC「CICが保有する信用情報」(2026年7月時点)
ここから読み取れることは2つあります。
1. 「落ちた」という結果は登録されない 申込情報に記録されるのは「申し込んだ事実」であって、可決・否決といった審査結果ではありません。
1行落ちたからといって、その事実が他行に伝わることはない のです。「1行落ちると信用情報に傷がつく」という不安は、住宅ローンに関しては誤解です。
2. ただし「申し込んだ事実」は6か月見える 逆に言えば、短期間に何行も申し込んだ形跡は半年間、他行の審査担当者に見えています。5行・6行と並ぶと、「どこかで断られ続けているのでは」「そこまで急ぐ事情があるのか」という
心証 の問題は残ります。審査は数字だけの機械判定ではなく、最終的には人が総合的に判断する部分があるためです。
事前審査と本審査で、複数申込の是非は変わる ここを混同すると失敗します。同じ「複数申込」でも、段階によって意味がまったく違います。
段階 複数申込の考え方 理由 事前審査(仮審査) 2〜3社まではむしろ推奨 結果が出そろってから条件を比べられる。落ちても他行に結果は伝わらない 本審査 原則として1社に絞る 提出書類が大量で負担が重く、断る手間も増える。同時進行させても得られるメリットが小さい
事前審査は、いわば「この条件なら貸せそうか」の当たりをつける段階です。
ここで2〜3社に絞って同時に出しておき、通った銀行の条件を並べて比べる ——これが最も無駄のない進め方です。 一方、本審査は物件の担保評価や団信の告知まで踏み込む正式な審査で、必要書類も一気に増えます。複数行で同時に走らせても、最終的に契約するのは1行だけ。手続きの負担と辞退の手間が増えるだけで、実利はほとんどありません。
審査にはどれくらい時間がかかるのか 「1行ずつ順番に」が危険なのは、時間切れのリスクがあるからです。金融機関は審査日数を公表していませんが、実務上の目安はおおむね次のとおりです。
事前審査 :即日〜1週間程度(ネット銀行は即日〜3日、メガバンク・地方銀行は3日〜1週間が目安)本審査 :1〜3週間程度(保証会社の審査が入る銀行はやや長め)契約〜融資実行 :さらに1週間程度 つまり、
申し込みから融資実行までは通算で1〜2か月みておくのが安全 です。1行目の結果を待って落ちてから2行目に申し込む——という進め方では、単純に倍の時間がかかります。売買契約には融資特約の期限があり、
間に合わなければ、せっかく見つけた物件を手放すことになりかねません 。事前審査を2〜3社まとめて出すいちばんの実利は、この「時間のリスク」を消せることにあります。
そもそも、なぜ比べる必要があるのか ─ 差がつくのは金利だけではない 複数の銀行に事前審査を出す目的は、「通りそうな銀行を探す」ことだけではありません。
同じくらいの金利でも、最終的に支払う総額は銀行によって数十万円単位で変わる からです。当サイトが金利以外の「総コスト」を重視するのは、ここに差が出るためです。
比較の観点 見るポイント 備考 融資事務手数料 定率型(借入金額×2.20%〈税込〉が主流)か、定額型か 3,000万円の借入なら定率2.20%で66万円(税込)。定額型の銀行とは差が大きい 保証料 0円か、借入時に一括前払い(または金利上乗せ)か 保証料が0円でも事務手数料が高いことがある。必ず合算で見る 団信の上乗せ金利 一般団信は0円か。がん・全疾病保障は上乗せ何%か 上乗せ0.1%でも35年では総額に効く。保障範囲と併せて比較する 繰上返済手数料 一部繰上返済が無料か、都度有料か 繰上返済を予定しているなら、ここが実質的な差になる
事前審査が通った銀行が2〜3行あれば、この4項目を並べて「借入額×返済期間」の条件で試算し直すことができます。
表面金利がいちばん低い銀行が、総支払額でも最安とは限りません。 たとえば
SBI新生銀行 は、事務手数料が借入金額×2.20%(税込)の定率型である一方、保証料と一部繰上返済手数料が0円、一般団信は上乗せ0円という構成で、費用の内訳がつかみやすいのが特徴です。
なお同行は原則として事前審査を行わず、本審査のみで完結する 点も知っておくとよいでしょう。他行と併願する場合は、他行側の事前審査を先に済ませてから動くと段取りがスムーズです。
属性に不安があるなら、複数申込の価値はさらに大きい 国土交通省の「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(令和8年6月公表)によると、金融機関が融資の際に見る審査項目は、
完済時年齢(98.4%)・健康状態(96.1%)・借入時年齢(96.2%)・年収(94.2%)・勤続年数(93.9%)・返済負担率(90.9%) などが上位を占めます。逆に言えば、これらの
どこを、どの程度重く見るかは金融機関ごとに違う ということです。
自営業・個人事業主 :直近の申告所得の見方(1期分か、2〜3期の平均か)が銀行で分かれます。1行の結果だけで「自分は無理だ」と結論を出すのは早計です。転職直後 :勤続年数を厳格に見る銀行がある一方、同業種でのキャリアアップ転職を実質的に評価する銀行もあります。ペアローン・収入合算を検討中 :2人分の審査になるため、それぞれの信用情報・他の借入(カーローン、奨学金など)も見られます。事前審査の段階で2〜3社に出しておくと、借入可能額のレンジがつかめます。 属性に不安がある人ほど、1行の判断を「世の中の判断」と思い込まないこと 。これが複数申込の最大の価値です。
審査に通った後、その銀行を断ってもいい? 断って問題ありません。
審査に通っただけでは融資は成立せず、契約(金銭消費貸借契約)を結んで初めて借入が確定します 。本審査を通過すると、銀行から契約の意思確認を求められます。回答期限は銀行によって異なるため、
複数行に通ったら、期限内に条件を比べて1行を選び、他行にはできるだけ早く辞退の連絡を入れましょう 。断ったことが信用情報に登録されることも、次回の審査で不利に扱われることもありません。 なお、多くの銀行では
適用される金利は「申込時点」ではなく「融資実行時点」の金利 です。金利が動きやすい局面では、実行月がずれるだけで返済額が変わることもあるため、スケジュールにも余裕を持っておきましょう。最新の適用金利や取扱い条件は、必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問 Q. 事前審査に落ちました。すぐ別の銀行に申し込んでも大丈夫ですか? A. 申し込むこと自体は可能です。落ちたという結果は信用情報に登録されないため、他行に「落ちた事実」が伝わることはありません。ただし、
落ちた原因(他の借入が多い、返済負担率が高い、信用情報に延滞の記録がある等)を放置したまま次に出しても、同じ結果になりやすい のが実際です。まず原因を推測し、可能なら他の借入を整理してから動きましょう。
Q. 何行までなら申し込んでも心証を損ねませんか? A. 明確な上限はありませんが、
事前審査は2〜3社に絞るのが無難 とされています。申込情報は照会日から6か月間、他行からも見えるためです。「とりあえず全部」ではなく、金利タイプ・総コスト・団信の条件から先に候補を絞ってから申し込むほうが、結果的に近道です。
Q. 不動産会社が提携銀行にまとめて出す事前審査も、信用情報に残りますか? A. 残ります。自分で申し込んだ場合と同じく、申込情報として各行分が記録されます。担当者に任せきりにせず、
何行に、どこへ出すのかを事前に確認しておきましょう 。
Q. 借り換えの場合も、複数の銀行に申し込んでよいのですか? A. 考え方は新規借入と同じで、事前審査を2〜3社に出して条件を比べる進め方が有効です。借り換えでは
金利差だけでなく、新たにかかる事務手数料・登記費用を回収できるか が判断の分かれ目になるため、複数行の見積もりを並べる意味はより大きくなります。
Q. 事前審査に通れば、本審査も必ず通りますか? A. 必ずではありません。事前審査は申告ベースの簡易な確認で、本審査では書類で裏づけを取り、物件の担保評価や団信の健康状態の告知も審査対象になります。
健康状態は9割超の金融機関が審査項目としており、団信に加入できないと融資自体が受けられない銀行もあります (フラット35のように団信への加入が任意の商品もあります)。
まとめ 事前審査は2〜3社に同時申込が基本。落ちた結果は信用情報に残らない 本審査は1社に絞る。申込履歴は6か月見えるので「出しすぎ」は避ける 比べるのは金利だけでなく、事務手数料・保証料・団信を含めた総コスト 「複数申込は不利」という思い込みで1行ずつ順番に申し込むと、時間だけを失います。
候補を2〜3行に絞り、同時に事前審査を出し、通った銀行の総コストを並べて決める ——これが、遠回りせずに納得して選ぶための現実的な手順です。
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