
かつて「低金利が続く前提」で語られてきた変動金利は、いま局面が変わりました。日本銀行は2026年6月16日に政策金利を1.0%程度へ引き上げ(1995年以来およそ31年ぶりの水準)、3メガバンクは
2026年8月3日から短期プライムレートを年2.125%→2.375%へ引き上げます。変動金利の基準金利はこの短プラに連動するため、いよいよ「上がる側」の話が現実になってきました。 それでも住宅ローン利用者の
75.0%が変動型を選んでいます(住宅金融支援機構・2026年1月調査)。低さは魅力ですが、変動金利は
「金利が上がったときに何が起きるか」を知らずに選ぶと、後から効いてくるタイプの商品です。特徴と落とし穴を、返済額と総支払額の観点から整理します。
変動金利の特徴
- 住宅ローンの中では最も低金利
- 金利の見直しがある(半年ごと)
- 返済額も見直しがある(5年ごと)
- 5年ごとの返済額見直しで返済額は125%以上にならない
これが一般的な変動金利の特徴です。
変動金利のメリットは、
低金利で住宅ローンを借り入れでき、
借りた当初の返済総額を抑えられることと、
他の金利タイプより元金の減りが早いことがあげられます。 ただし、
3と4(5年ルール・125%ルール)は「すべての銀行にある仕組み」ではありません。ここが最初の落とし穴です。詳しくは後述します。
変動金利の落とし穴
変動金利で気をつけなければならないことは何でしょうか。金利の低さだけで変動金利を選ぶと後々大変な事になるかもしれません。
金利の変動がある
変動金利は、その言葉通り金利が変動します。金利の下落局面では最大のメリットですが、上昇局面ではデメリットでもあります。しかも、
金利の予測は専門家でも不可能と言われるほど困難で、正確な返済総額の計算ができません。 実際、変動金利の引き上げ時期は銀行によって足並みがそろいません。三菱UFJ銀行は公式サイトで
「2026年9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直す」と告知し、9月分の基準金利は8月31日に発表するとしています。一方で、多くの銀行は
年2回(4月・10月)の基準日で基準金利を見直す仕組みです。
「変動金利の上昇は一律◯月から」とは言えないため、自分の借入先の公表を確認する必要があります。 金利が上がると、返済額はどう動くのか。
3,000万円を35年・元利均等で借りた場合で見てみましょう。
借入3,000万円・35年・元利均等・ボーナス払いなしで、同じ金利が完済まで続いた場合の試算。金利+1.0%で毎月約1.5万円、総返済額では約614万円増える。| 適用金利 | 毎月の返済額 | 35年間の総返済額 | 当初との差 |
|---|
| 年0.950%(借入当初) | 約83,988円 | 約3,528万円 | — |
| 年1.450%(+0.5%) | 約91,122円 | 約3,827万円 | +約299万円 |
| 年1.950%(+1.0%) | 約98,611円 | 約4,142万円 | +約614万円 |
| 年2.950%(+2.0%) | 約114,620円 | 約4,814万円 | +約1,286万円 |
※借入当初から完済まで同じ金利が続いた場合の試算(元利均等・ボーナス払いなし)。実際は金利が動くたびに再計算されます。 金利が1%上がるだけで、
総返済額はおよそ600万円増える計算です。変動金利を選ぶということは、この振れ幅を借り手が引き受けるということにほかなりません。
未払い利息
5年ルールのある銀行では、毎月の返済額は5年間変わりませんが、半年ごとに金利に応じて、毎月の返済額の元金と利息の割合が見直され変更されます。 金利が下がっている時には、月々の返済額から元金の割合が増えて元金が減っていきますが、
急激に金利が上がった場合には月々の返済額から利息の割合が増え、元金の返済が進まなくなることがあります。これが進み月々の返済額でも利息分を全て補えずに、支払えていない利息が積み上がっていくことを未払い利息と言います。 さらに、
未払い利息が続く状態では、月々返済しても元金は1円も減りません。未払い利息は消えてなくなるわけではなく、返済期間の終盤や完済時に精算を求められることがあります(精算方法は金融機関によって異なります)。 ここで押さえておきたいのは、
5年ルール・125%ルールは「返済額の急増をやわらげる仕組み」であって、「支払う総額を減らす仕組み」ではないということです。返済額の増加を先送りしているだけで、利息そのものは免除されません。むしろ元金の減りが遅くなるぶん、総支払額は増える方向に働きます。
5年ルール・125%ルールが「ない」銀行がある
見落とされがちですが、
5年ルール・125%ルールは法律で決まった仕組みではなく、銀行ごとの商品設計です。ネット銀行を中心に、これらを採用していない銀行があります。
| 金融機関 | 5年ルール・125%ルール | 金利上昇時に起きること |
|---|
| 三菱UFJ銀行(変動・元利均等) | あり ※元金均等返済は対象外 | 返済額は5年間据え置き。内訳(元金と利息)が変わり、上昇が大きいと未払い利息が生じ得る |
| ソニー銀行 | なし | 金利見直しの都度、返済額を再計算。上昇分がすぐ返済額に反映される |
| SBI新生銀行 | なし | 適用利率が変わるたびに返済額を変更。最終返済額へのしわ寄せ(未払い利息)が生じにくい |
どちらが有利かは一概には言えません。
5年ルールがある=家計が急変しにくいという安心感がある一方、
5年ルールがない=返済額はすぐ増えるが、元金は着実に減り、未払い利息を抱え込まないという透明さがあります。「返済額が変わらないから安心」と誤解したまま5年ルールのある商品を選ぶことこそが、いちばんの落とし穴です。
「変動金利で借りておいて、上がってきたら固定金利に切り替えよう」は難しい
変動金利と固定金利では、
固定金利のほうが先に上がります。 つまり、
変動金利が上がってきたから固定金利に切り替えようと思った時には、固定金利はすでに上がっているのが普通です。 2026年はまさにこの構図です。長期金利(新発10年国債利回り)は2026年7月9日に一時
年2.900%と約30年ぶりの高水準をつけ、大手5行の10年固定(最優遇)の平均は年3.5%前後。全期間固定の代表であるフラット35も、2026年7月適用分は
年3.14%(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)と、3%を超える水準にあります。「上がってから固定へ」と考えていた人にとっては、乗り換え先の金利が先に上がってしまった状態です。 長期の固定金利の指標となる国債金利は、金利が実際に上がる前に「これから上がりそうだ」と予想された段階で織り込まれて上昇します。この仕組みを理解しておけば、
固定への切り替えは「上がってから」ではなく「上がる前」にしか間に合わないことがわかります。
変動金利で住宅ローンを借りてもよい人
返済に余力があり、繰上返済ができる人
将来にわたって安定した収入が見込め、貯蓄と繰上返済の余力がある家庭なら、返済額が上がっても期間短縮や返済額軽減で対応できます。金利上昇はダメージではなく「調整可能なコスト」になります。 目安として、
金利が2%上がっても毎月の返済額(上の試算では+約3万円)を家計から吸収できるかを先にシミュレーションしておきましょう。共働きでも、片方の収入が育休・転職で一時的に落ちる時期は必ず来ます。そこに耐えられるかが本当の判断基準です。
借入額が少なく、返済期間が短い人
借入金額が多く、返済期間が長いほど、金利が上昇した時の返済額の増加は大きくなります。 しかし、借入金額が少ない場合や、返済期間が短い場合には、金利の上昇による返済額の増加は限られるため、リスクは小さくなります。目安としては、期間は20年以下、借入額は2,000万円程度でしょうか。残高が小さいうちに完済まで走り切れる見込みがあるなら、変動の低金利を素直に享受できます。
金利の動向を自分で追える人
変動金利の基準金利は短期プライムレートに連動し、その短プラは日銀の政策金利に連動します。
日銀の金融政策決定会合(2026年は7月30〜31日など)と、各行の基準金利改定のお知らせをチェックする習慣があるなら、固定への借り換えを含む対策を早めに打てます。 逆に「借りたら金利は見ない」というタイプの人は、変動より全期間固定のほうが向いています。
ローン選びは、商品性だけでなく自分の管理コストで選ぶものです。
リスクを把握して住宅ローンを選ぼう
変動金利と固定金利のどちらが得なのかは、将来の金利を予測できない以上、事前には決着しません。ただ、はっきりしているのは、
変動金利のリスクは借り手にあり、固定金利のリスクは貸し手にあるということです。
参考:当社編集部の実測——当社は2026年7月に主要14の金融機関の公式サイトを実際に確認し、125件の適用金利を集計しました。前月と比較できた112件のうち、
変動金利は26件中21件が据え置きで、引き上げは4件。7月時点では変動は動きが小さい一方、固定は引き下げが目立つという結果でした(当社調べ・2026年7月1日確認)。
ただし8月3日の短プラ引き上げは、これから基準金利へ波及していきます。「いまの変動が低いこと」と「これから低いままであること」は別の話です。最新の適用金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください。 金利タイプを決めるときは、金利の数字だけでなく、
①5年ルール・125%ルールの有無 ②事務手数料・保証料 ③団信の保障範囲まで含めた総コストで比べてください。たとえば
SBI新生銀行は、5年ルール・125%ルールを採用しない代わりに未払い利息が積み上がりにくい設計で、保証料と一部繰上返済手数料は0円、一般団信も上乗せ0円。2026年3月からは全疾病保障付団信も上乗せ0円で選べます(事務取扱手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率型)。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応しているため、仕組みを対面で確認したうえで申し込みたい人にも向いています。 住宅ローンは長い返済期間が続きます。
リスクをいかに減らすかを考えるのも住宅ローン選びの大事な点です。それぞれの住宅ローンの仕組み、特徴、計算方法、メリット・デメリットを理解した上で選びましょう。
※本記事の金利・制度は2026年7月時点の公表内容です。金利は随時改定されるため、最新の適用金利・商品内容は必ず各金融機関の公式サイトをご確認ください。