当初期間引下げと全期間引下げの返済額を比べるイメージ

日本の住宅ローンの金利タイプは大きく、「変動金利タイプ」「当初期間固定金利タイプ(固定金利選択型タイプ)」「固定金利タイプ」の3つの種類に分かれています。

 

このうち固定金利選択型には、金利の「引下げ(優遇)」のかかり方が異なる2つの種類があります。固定金利選択型を選ぶ場合、この違いを知らないまま「当初の金利の低さ」だけで契約すると、特約期間が終わった後に返済額が想定以上に増えて後悔する可能性があります。

当初の返済額は当初期間引下げタイプのほうが軽くなりますが、完済までの総返済額は、特約期間が終わった後の引下げ幅でほぼ決まります。仮の金利で3,000万円・35年を試算すると、終了後も引下げ幅が続く全期間引下げタイプのほうが300万円以上少なくなりました。

住宅ローンの金利タイプそのものの違いは、住宅ローンの金利タイプの解説で紹介しています。

 

「当初期間引下げ(優遇)タイプ」と「全期間引下げ(優遇)タイプ」

固定金利選択型には「当初期間引下げ(優遇)タイプ」と「全期間引下げ(優遇)タイプ」という2つの種類があります。

どちらも完済するまで一定の金利を「基準金利」から差し引いた金利を適用金利とするという仕組みは同じですが、その「優遇幅」の構成が大きく違っています。

 

  • 当初期間引下げ(優遇)タイプ
    当初の特約期間を重視し金利を引下げるタイプです。当該期間中の金利引下幅は全期間引下げタイプより大きくなりますが、特約期間終了後の引下幅は全期間引下げプランよりも小さくなります。
    例えば、当初10年間は「基準金利から-1.6%」で、11年目からは「基準金利から-0.2%」に切り替わるというプランです。
  • 全期間引下げ(優遇)タイプ
    借入期間中すべての期間において金利を引下げるタイプです。当初期間引下げタイプに比べ、特約期間中の金利引下幅は小さくなります。
    例えば、「基準金利から-1.3%」が借入期間中適用になります。

当初の返済額については、固定金利期間中の金利がより低い当初期間引下げタイプのほうが少なくてすみます。しかし、何十年という返済期間があるローンでは、全期間を見て有利かどうかを判断する必要があります。というのも、返済期間が長い場合は、固定金利期間が終わった後の金利優遇の状況によって、総返済額が大きく変わってくるからです。

 

当初期間引下げは最初が軽く、全期間引下げは終了後も引下げが続く

比較の観点当初期間引下げタイプ全期間引下げタイプ
特約期間中の引下げ幅大きい(当初の返済額が軽い)小さい(当初の返済額はやや重い)
特約期間終了後の引下げ幅小さい(返済額が増えやすい)特約期間中と同じ幅が続く
向いている考え方教育費前など「当初だけ確実に軽くしたい」・期間終了時に見直す前提の人完済まで見通しを立てたい・返済額の急な変化を避けたい人
注意点期間終了後は「その時点の基準金利−小さい引下げ幅」になる当初の負担軽減効果は限定的

 

3,000万円・35年の試算では全期間引下げタイプが約320万円少ない

上の例の引下げ幅(当初10年は−1.6%・11年目から−0.2%/全期間−1.3%)を、仮の基準金利年4.000%に当てはめて試算しました。当初期間引下げタイプは10年間が年2.400%で11年目から年3.800%、全期間引下げタイプは35年間ずっと年2.700%になります。

仮定引下げタイプ1〜10年目の毎月返済額11年目以降の毎月返済額総返済額
基準金利が年4.000%のまま当初期間引下げ105,647円123,095円約4,961万円
全期間引下げ110,491円110,491円約4,641万円
11年目に基準金利が年5.000%へ上昇当初期間引下げ105,647円136,465円約5,362万円
全期間引下げ110,491円123,174円約5,021万円
※当編集部の試算。借入額3,000万円・35年・元利均等返済・ボーナス払いなし。金利はすべて仕組みを説明するための仮定値で、実在の金融機関の金利ではありません。11年目以降は残高と残り期間で返済額を計算し直しています。諸費用は含みません。

当初期間引下げタイプが得をするのは最初の10年間で、毎月4,844円、10年で約58万円返済が軽くなります。ところが11年目に引下げ幅が1.6%から0.2%へ縮むと、毎月の返済額は約1.7万円増え、残り25年で、その差を上回る利息を払うことになります。基準金利が変わらなくても総返済額の差は約320万円、基準金利が1%上がれば約341万円に広がります。

差がここまで開くのは、11年目の時点でまだ借入額の多くが残っているからです。元利均等返済では返済の前半ほど利息の割合が大きく、10年返しても残高は約2,382万円と、当初の約8割が残っています。その大きな残高に、引下げ幅の小さい金利が25年間かかり続けるため、当初10年の軽さでは埋め合わせられません。

 

金利上昇局面では「特約期間終了後」の想定がより重要に

引下げ幅(優遇幅)は契約時に決まりますが、引下げの対象となる「基準金利」自体は将来変わり得ます。特約期間終了後の適用金利は「その時点の基準金利−終了後の引下げ幅」で決まるため、基準金利が上がっていれば、当初期間引下げタイプでは「引下げ幅の縮小」と「基準金利の上昇」が重なって、返済額が大きく増えることがあります。

実際、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)では、今後の金利について「上昇する」と見る利用者が73.7%にのぼる一方、金利タイプの選択は変動型75.0%・固定期間選択型14.9%・全期間固定型10.1%と、固定期間選択型・全期間固定型がそれぞれ前回調査から増えています。

金利のある時代に入り、「当初の低さ」より「期間終了後にいくらになるか」を意識する利用者が増えていると読み取れます(住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」)。

同じ調査では、金利が上がったときに返済額がどれだけ増えるかを「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と答えた人が合わせて52.0%いました。金利が上がったときの返済額の増え方に自信がない人が、半数を超えていることになります。

 

また、優遇金利を利用するには、住宅ローンの返済口座を給与振込口座に指定することなどの条件がついていたり、返済が滞ると優遇制度が中止となるなどのルールが設けられています。「当初期間引下げ(優遇)タイプ」や「全期間引下げ(優遇)タイプ」のルールや優遇幅は各金融機関によって違うので、それぞれの金融機関に確認する必要があります。

特約期間が終わるときは、多くの金融機関で再び固定期間を選び直すか、変動金利に移るかを選べます。終了後の適用金利がいくらになるかは、その時点の基準金利が分からないと計算できないため、満了の時期と終了後の引下げ幅は契約書で把握しておく必要があります。変動金利に移った後の返済額の動き方は、住宅ローン変動金利の落とし穴の記事で解説しています。

満了は他行への借り換えを考えやすい時期でもありますが、事務手数料・登記費用などの諸費用がかかるため、金利差だけでなく諸費用込みの総返済額で比べてください。

 

どちらがお得なのかは、借入額や返済期間、借り方によって異なるので一概に判断はできません。しかし、住宅ローンを選ぶ際には安易に金利の低い商品を選ぶのではなく、その低い金利がいつまで続くのか、特約期間終了後を含めた返済総額はいくらになるのかを把握して、返済計画を立てる必要があります。

あわせて、保証料や事務手数料などの諸費用も総返済額を左右します。例えばSBI新生銀行は保証料0円・一部繰上返済手数料0円で、事務手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率タイプです。固定期間を選べる住宅ローンを扱う銀行の具体的な条件は、楽天銀行のフラット35と金利選択型の比較の記事でも紹介しています。

金利の優遇幅や手数料の条件は改定されることがあります。総額で比べる際は、各金融機関の最新の条件表を基にしてください。

住宅ローン比較ネット 編集部

掲載情報は各金融機関・公的機関の公式情報を確認して作成しています。